洗足音楽大学大学院オペラ公演「愛の妙薬」

おおっと!
一月もブログを放置してました(@@)

腕の調子が悪い時を除いては、ちょっと久しぶりの長期放置だったかも(笑)。


3月8,9日と勤めている洗足音楽大学の院オペが終了しました。

演目はメジャー中のメジャー、ドニゼッティ作曲オペラ「愛の妙薬」

農夫のネモリーノが、農園主(農園主の娘とか色々と解釈がある)であるアディーナに惚れているのですが、内気で中々告白できない。

しかしある日、アディーナが農夫たちのお昼休みに朗読していた、イゾルデとトリスタンの愛の妙薬の話を聞いて、たまたまその日に村を訪れた、詐欺師のドゥルカマーラにその薬を求めて手に入れます。
本当はワインであるその液体を妙薬とすっかり信じきったネモリーノは、薬を飲んで酔っ払ってしまいます。
その勢いで、アディーナに恋の鞘当を始めますが・・・。

本当に日本でどれだけ上演されるかわからないくらいの人気演目ですが、ドニゼッティ自身がすごく売れっ子の時期で、二週間で仕上げたとか色々と逸話もある作品。

しかし、正にこれベルカント!と言うべき美しい楽曲と楽しい内容で、名作とはこういうものを言うんだろうなと納得。楽しく作品を作りました。

出演したキャストは大学院生で、オーディションで選ばれました。
合唱団は男子は1年生から、女子は3年生からそれぞれ大学院の2年までの総勢46人ほど。

試験期間を挟み、ほとんど時間の無い中で、彼らは本当に良く頑張り、先の記事にも書いたとおり、ただただ彼らが作品の中に生きると言う事を、一生懸命やってくれました。

結果、公演は大成功です!

特に合唱団の声の良さにびっくり!

加えて、まだオペラ実習も取っていない、1,2年生も含めて、彼らなりのヴィジョンをきちんと捉えてくれて、内容を創ってくれました。

そういう意味では、洗足音楽大学の声楽科は良い声を持っている学生が多いと認識。

先生方の指導も良いのでしょうが、元々校風として大らかでもあり、気持ちを開くということに関して自然体かもしれません。
楽しいと乗ってくる(笑)。

いずれにしても、彼らが自分たちでお客様に何を提供するかを一生懸命考え、そして表現してくれた公演でした。
感謝、感謝!

指揮はアレッサンドロ・ベニーニというイタリア人で、毎回大学院のガラコンサートを振ってくれています。

一本を一緒にやったのは初めてですが、いつものように自分の仕事を黙々と、そしてきちんとやっていました。

しかしながら、彼のドニゼッティは何故かロッシーニよりも早い!

良く学生たちが付いていったと思うくらいに、テンポが速くびっくり!(@@)

こうなると、やっぱりそれぞれ人間が関わり、パーソナリティによって音楽空間が変わってくるとまざまざと感じましたね。

舞台は工藤明夫君という舞台美術家が創ってくれました。
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公演をした前田ホールという学内にあるホールは、元々コンサートホールで、ごらんの様にパイプオルガンが鎮座ましましています。

ミュージカル科等ある大学なので、そういう公演ではホリゾントを降ろして、オルガンを隠して使ったりもします。

しかし、オルガンがあることで奥行きがほとんど無く、おまけに高さだけはあると言うこのホールを、少々ホリゾントで隠しても、結局平べったい空間になると思い、いっそオルガンの部分も含めて客席まで舞台セットと考えて創ったらどうかと工藤君と御相談。

結果、イントレを使って、高さを出し、客席からも出演者が登場するという形を取りました。
大成功だったと思います。

工藤君はこういう無機質なものを空間に添えるのが非常に上手だと認識しています。

実は以前、彼がやはりイントレ(鉄骨の屋台です)を使って舞台セットを組んだものに、アシスタントで参加したのですが、この時も、組み方の導線が面白かった。それで今回もお願いしてみました。

これに加えてドゥルカマーラの薬を売るための垂れ幕のデザインなど秀逸。
剛と柔を組み合わせるとかなり面白いデザイナーなのではないでしょうか。

これに明かりを加えてくれたのは、ASGの大平智己君。
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この人は最近御一緒するようになった照明家ですが、とにかく毎回思うのは、非常に「頭が良い」ということ。

いつものガラコンでもそうですが、与えられた時間内で「いつの間にここまで?!」という明かりを必ず創ってくれます。
しかもそれは、私の思っているような明かりとは全然違うものであることが多々。

実はこの人の明かり自体は、私の感性と必ずしも合致するかどうかはわかりません。

お稽古を見ていただいて、お話ししていても「それわかります」と言う様な話にはならない。

なので、大抵、思っていることと、必要なことを話させていただいて、後は彼にすべてお任せです。

そして実際に出た明かりを観て、「こんなのいつの間に創ってたの???」と驚かされる(笑)。

しかも、それがいつも「うわ~、頭良い~!」と何故か唸ってしまうんですね。
なんと言うか、理由がわかるというか・・・・。

今回も、1幕のフィナーレで、いきなり自分を無視し始めたネモリーノに業を煮やしたアディーナが、自分に求婚している軍曹のベルコーレの求愛を受けて、薬の効目が現れると言われていた翌日の朝に結婚すると約束してしまうという場面の明かりで、脱帽事件(笑)。

何が起こったかというと、その場面でネモリーノがアディーナに「俺を信じて、結婚を一日待ってくれ」と歌う有名な曲があるのですが、その曲は短調で始まって、いきないネモリーノが「アディーナ信じてくれ」とお願いすることから、日本人が歌うと、どうも泣きが入る。

私はそれが常々嫌いで、今回もそのことを学生たちに懇々と諭し、絶対に泣くな!と厳命してました。

なぜかというと、途中「俺にはわかっているんだ」という歌詞があり、そこから音楽が綺麗な長調に変わって言って、ネモリーノが愛を訴えるという幸せを感じるからです。

この時、幸せが待っているのだということをベースに、この歌を歌わないと意味が無い。
ネモリーノが始めて、自分の気持ちを自分の言葉で訴えるという成長の時でもあります。

それは、空間も同じでした。

そのことを大平君にお話して、GPで明かりを観ているときに、その場面の音楽が始まった時、先の写真の三番目にあるように、オルガン部分がいきなり三色に変わったんですね。

いきなりだったんで違和感を覚えて「?」と思っていたら、音楽が長調に変わった途端に、すべてが成立しちゃったんです!

つまり、彼の明かりは最初から、どっしりとした幸せを創っており、音楽が変わった瞬間に、まるで「これがすべての答えだ」といわんばかりの正当性で空間を決めてしまったというわけです。

これが、音楽の変化とともに、ものすごく気持ちを納得させてくれたので、大感動でした!
こんな明かり、観たこと無い!

しかも、この事によって新しい事実にも気付いた。

それは、明かりが全てを幸せにしてくれたのに、奏でられているオーケストラの音楽の変化が場面を動かさなかったために、空間が同じように変化しなかったこと。

しかし、オケが下手だったとか、演奏がまずかったということではありません。

今回オケは学生に+先生方のトラが入った学内オケでした。

彼らは物凄く頑張って、素晴らしいレベルでありましたが、内容をどこまでわかって弾いていたかというと、そこは恐らく+-だと思います。

何故かというと、ここには経験が必要だからです。

東フィルなどの様に、何回も色んな指揮者とオペラをやっているのならば、こういう内容の変化は感情と一緒に変化して行きます。

彼らに場面の内容を伝えることがあったかどうかはわかりませんが、それを自分の音として解釈するのには経験が要ります。

なので、この時のオケの音は、短調の部分から暗く重く始まって、非常に演歌的な長調の変化に聴こえたのですね。

そうすると、残念ながら照明とのバランスが崩れてしまい、音楽空間としては難しい所でした。

ひょっとしたら、この明かりに違和感を覚えた人は居たかもしれません。

本当に音楽空間というのは繊細で微妙なものです。
そのことに気付けた今回の経験は、大きな収穫でした。

しかし、こういう明かりを創れることは大平君の才能の賜物です。
いや、凄い人ですよ(^^)

こんな人たちに支えられて、なんとか演出家としての仕事をこなすことが出来ました。

1月の「カルメン」に続き、私はやっとオペラ演出家としての立ち方を理解したかもしれないと思っています。

「しれない」と言うのは、次の現場がないと、それが本当かどうかが自分でもわからないからですが、恐らく、ここから先は、揺らがない核が出来たと思っています。

この大学は講師陣の結託も強く、衣装やメイク等々、裏方のことまでも講師の先生方の御尽力に多く支えられました。

本当は客席で聴いていただくのが正しいのですが、本当に感謝しています。

さて、やっと2011年が終わった感があります。

ここまでの激務に晒されて、ちょっと身体が壊れちゃいました(^^;)

今は少しずつ心と身体を癒している最中。

ここからまた9月までは、ただの人となります(笑)。

すっかり枯れてしまった音楽の泉がまた心に沸き起こってくれるのをひたすら待つばかり。

関係者の方々、そして学生たち、本当にお疲れ様。
そして、ありがとうございました!
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by kuniko_maekawa | 2012-03-17 15:46 | 観劇日誌 | Comments(1)

Commented at 2012-03-19 00:09 x
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