ドリーム・チーム

新着情報でもお知らせしているように、来年千葉で「魔笛」を演出します。私にとっては、久しぶりに大きな規模の公演です。と言っても新国立劇場や東京文化会館などでやるような規模ではありませんが、ある程度のホールの大きさがあり、ピアノ版ですが指揮者が居て、舞台監督初め、衣装、舞台美術、照明、演出助手まで入ったいわゆるフルサイズの公演です。今、その準備が始まって、それぞれのプランナーと打ち合わせが始まりました。今回は私にとってもリハビリと勉強を兼ねた場にしようと、胸を借りた人たちは、皆、私より若く、才能をもっており、これからオペラをやっていきたいと情熱を持っている人たちです。そして、ちゃんとした目と絵を持っている人たち。
私が演出家になりたいと言うことを、どこか自信を持って言葉に出来ないのは、ヴィジュアルに対する自信の無さです。オペラは音楽的要素の他に、舞台美術、衣装、照明と言う視覚的要素が必要です。つまり、目で見えるもの。一番大切なこものは耳に入ってくるもの。やはり無意識に感性を刺激するものに、お客の心は動かされます。音楽、言葉、気持ち。五感で感じることが出来るものは、それだけで楽曲を伝える力を持ちます。しかし、それだけではオペラ公演と言うのは成り立ちません。なぜなら、オペラはあらかじめ舞台で観せることが条件としてあるからです。つまり、聴いてよし、観てよしがオペラの基本です。それで演出家と言う職業があるのです。ところが、私はその「観せる」と言うのが、よくわかりません。もちろん、絵が無いわけではありません。まがりなりにも演出家として仕事はしていますから、何かしらの絵は出せます。しかし、こと色や形に関して、これというはっきりしたものがいつもありません。しかし、好き嫌いははっきりしていますから、センスと言うより、タダの好みですよね。そして、そのセンスまがいのもので出てくる舞台上のものが良いか悪いか判断がつかない。一点の衣装とか、小物一つとかとかは決められても、舞台上の絵というのがどうなのか・・・・。他の演出家の打ち合わせを聞いてても、各プランナーとちゃんと渡り合って、自分の欲しい形や絵を時代考証も含めてきちんと言える。当たり前だけど、素晴らしいですよね。そこで、なんだか自分に疑問を抱いて、演出家になると言うことに積極性がなくなってしまいました。しかし、ある日師匠にちらとそのことをもらしたところ、「プランナーを選べば良いんだ」って、言われたことがあります。自分にない目をもっているプランナーを選べばいい。つまり、足らないところを補ってくれるような人と仕事をすればいいってこと。これは、目からうろこでした。演出家と言うのは、すべてに権限がある代わりに、すべてに責任を取らなければいけないと思っていましたから、それをするのに実力不足だと考えていたわけですから。しかし、それから、ある勇気があれば、私も演出家になれるんだと考え直しました。それは「任せる」ということ。自分に自信が無いのなら、それを補ってくれる人をプランナーとして選べばいい。その代わり、任せる。これを心に決めて今回の人たちにお願いしました。
舞台美術の二村周作君、衣装の前岡直子さん、照明の稲葉直人君。みんな30代の前半で、今プランナーとしてもどんどん活躍の場を広げています。柔軟な頭を持って、快活で穏やか、何より人間として信頼しています。二村君と前岡さんは打ち合わせを始めましたが、私のつたないイメージを聞いて、面白い絵出してきてくれています。これに対して「好きだと思う」くらいしか言えない私が申し訳ないですが、とにかく胸を借りて、今回は演出家でいることを経験させてもらおうと思っています。私がちゃんとした演出家として一人前になることが、彼らに対しての義務だと思うからです。そうなったら、もっと大きな舞台で、多い予算で彼らの好きなことをさせてあげられますから。だからといって、今回何もしないと言うわけではありません。色んなことを考えながら、一緒に成長させていただこうと思っています。その代わりに任せます。彼らが私の目であり感性ですから。さて、どうなるかは実際に舞台観てのお楽しみ。興味のある方は、是非会場へ!
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by kuniko_maekawa | 2005-11-25 17:47 | オペラなお仕事 | Comments(0)

オペラ・レッスンのこと、演出のこと、舞台や絵画や色んなことを書きまくっています。


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