判断力

演出家をやっている時(スタッフは往々にそうですが)、常に持っていなければいけないのは、「判断力」だと思っています。つまり、その時、その場、その瞬間に、何が大切かを瞬時に判断する能力。これに長けているかいないかで、現場の流れが変わります。そして、その判断の大きな査定は、「拾うか、捨てるか」。
例えば、本番までには3週間くらいの稽古をします。その中で、最初のコンセプトどおりに行かなくなることは大いにありますし、逆に必要でなくなることも多々あります。あるいは、歌い手に能力が無く、こちらのやりたいことが出来ない場合、予算的にヴィジュアルが作れない場合、とにかく、色んな判断をしなければいけません。この判断力が無い演出家やプランナーと仕事をする時は、本当に大変。時間ばかりを損して結局、本番まで上がらないということももちろんあります。
自分で、演出をする時、一番気をつけていることは、どこまでコンセプトを成立させるかということ。限られた時間の中で、あるいは予算の中で、こだわるところにはこだわり、そうでないときは捨てる。これをあやまると、結局スタッフと歌い手を巻き込んで、稽古はうまく行きません。先日も、とある現場で演出家が歌い手にこだわったために、休み返上の稽古になりました。歌い手もスタッフも、へとへとです。もちろん、タイプもあります。詰めて詰めてそのぎりぎりの中で、生み出すことに満足感を覚える。先の演出家はそのタイプなのですが、では、ここにいたる稽古で何を生んでいたのか。その期間の方が大切なのではなかったかと私は思います。この現場は稽古期間が短く、段取りを渡すだけでも大変だったと思いますが、だったら、その時おおまかなことを渡すだけではなくて、コンセプトも話しながら、きちんとわたすべきだったでしょう。逆に、ここまでの稽古の流れで、ちゃんと絵ができているのですから、どこかでこだわりを捨てて、大きな流れで作品を仕上げるという段階を踏むべきだった。そうすれば、皆を疲れさせることも無かったわけです。
こういうことが、演出家の判断能力です。結局は彼らが流れを作るわけですから、その意識がどこまであるか。
私は、自分で演出をするとき、ある程度まで稽古して限界が見えたら、さっさと手を引くタイプです。ですから、だいたい舞台稽古までに、やるべきことを終えており、それ以上の満足は得ません。これも良くないことだと思っていますが、その代わり、誰も疲れさせずに、期間の中で作品をあげることは出来ます。これは、私の中で、演出という作業が「夢」ではなく「仕事」だという、認識が強いからです。
どちらが良いとはいえません。しかし、その場の判断で影響を与える人たちが多いということだけは、いつも心においておかないといけない商売だと思っています。もっとも、こだわりが無いから、演出をやっちゃいけないかと思うことの方が然りですけどね(^^;)
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Commented by p at 2006-02-08 14:03 x
 「判断力」写真を作るときにも必要です。
 私はどちらかというと、捨てるのは得意です。
Commented by うさぎ屋 at 2006-02-09 13:37 x
お写真拝見しました。何枚も撮るのでしょうが、どこを取って、どこを捨てるかは、きっとPさんしかわからないはず。それこそ、職人。私がいつも、びっくりする、自分の感覚も、そこなのです。(^^;)
by kuniko_maekawa | 2006-02-05 13:19 | オペラなお仕事 | Comments(2)

オペラ・レッスンのこと、演出のこと、舞台や絵画や色んなことを書きまくっています。


by kuniko_maekawa