日伊声楽コンコルソ

本日はチケットをいただきまして、初めて日伊声楽コンコルソの本選に行ってきました。これは今年で42回目になりますが、イタリア・アリアと歌曲で順位を競うコンクールで、これまでも、松本美和子さん、林康子さん、市原多朗さん等、オペラファンなら誰しも知っている、素晴らしい歌い手さんたちが優勝し、賞金でイタリア留学を果たしたり、次のステップへの足がかりとして踏んできた、由緒あるコンクールです。あまりコンクールに馴染みのない私でも、日伊何位と聞くと、へ~って、思わずその歌い手さんを評価する対象にしてしまうくらい。それで、興味も手伝って、会場へ足を運びました。

私自身もコンクールを経験してはいます。もう遠い昔の中学生とか高校生のころですが。しかし、やはり順位と言うもので評価され、しかも歴然と審査員の主観がその評価の中心であります。発表があったとき、自分と言う人間に線が引かれたように感じ、始めて自分を他人の評価に任せて、うまいか下手かを判断したことを覚えています。

さて、日伊コンコルソは1,2次予選を通過した人が本選に挑み、順位を決めていきます。今年は10人。Sop5人、テノール3人、バリトン1人、バス1人が残っていました。さすがに、本選に残るだけあって、皆さん歌唱の実力はレベルが高いです。しかし、疑問もいくつか・・・・。

まずは選曲。やはりコンクールと言うことで、賞を狙いに来るのでしょう。派手な曲、鑑賞に堪える曲が並んでいました。しかし、何人かの方は、本来のもち声を行かせる曲を歌ってないように感じました。なんというか・・・、響きに違和感があるというか・・・・。例えば、あるテノール君などは、多分ロッシーニかドニゼッティか、そこらをテクニックで聴かせた方がよほど響きがマッチして素晴らしかったろうなと思われるのですが、彼が歌った曲はヴェルディの重めのものだったりします。彼が歌うのを聴きながら、その声の中にロッシーニを歌った時の輝きみたいなものを想像しちゃうのですから、私の耳にはあまり心地よいとは思えませんでした。

それから、3曲歌っていましたが、その曲の順番。本当に聴かせたい曲を輝かせるために、皆さん色々考えるのでしょうが、あるSopの方は、私は非常に好きだったのですが、いきなり彼女の声にしては重めのアリアを二曲ずっしりと歌った後、きっと本来は彼女の持ち味であろう、スープレットな歌曲をすごく上手に歌っていました。それでも賞に入るかと思うくらい良かったですが、最初の印象が強すぎたのか、入選で終わりました。残念!

こう言う舞台はやはり通常の舞台とは違った緊張感があり、順番もくじ引きで決めるみたいだし、何か神聖なものさえ感じますよね。しかし、正直「あっ!」と思うような歌にはめぐり合えず、ちょっと期待しすぎた感じ。まだみなさん若いのですもんね。これからですね。

コンクールの審査をやっている間に、昨年の1位の羽渕浩樹君と、同じく昨年の2位の清水理恵さんとのミニコンサートがありました。実は、こちらが目当てで伺ったのですが、こういった大きなコンクールの賞をいただくというのは、やはり歌い手さんを育てるのでしょうか、お二人とも良く存じ上げているのですが、非常にレベルの高い、素晴らしいコンサートでした。

特に羽渕君は、副賞であるイタリア留学へ行って、この演奏会のために帰ってきている最中。下から上まで、非常に良い息の流れと響きを持っているのは元より、発語が、以前にもまして、前に流れるようになり、一回り声の広がりが広くなった感じ。ロッシーニとベルディでしたが、全然違う楽曲を見事に歌いこなしていました。この人の、持ち味は、すばらしく綺麗な高音域にあります。伸びやかな艶があり、それこそビロードのような耳触り。まだまだ声は伸びそうです。楽曲のレパートリーも幅が広く、これからが、本当に楽しみです。これからまたイタリアへ向かいますが、ますます輝きを増して戻ってきて欲しい人です。

清水理恵さんは、私のクライアントさん。リブレットを読み込むため私と勉強しにいらしています。声を聴かせて頂くのは今日が始めて。しかし、実に響きの空間が広い方で、びっくりしました。うまく表現できないのですが、コロラトゥーラかと思うような響きの位置ですが、その当たったところからの広がりが、会場を満たすような広さを持っているのです。そのため、少し言葉が奥になってしまいますが、だからといって、声が奥に行くことはありません。息の流れが良いことと、もしかして、共鳴感がいいのかもしれません。会場に対しての声の乗りを感じることが出来るのではないでしょうか?珍しい歌い手さんですね。
本来歌うことがきっと大好きだと思うのですが、舞台の上の空間が非常に明るくて、清潔。そして、楽しい。明るい曲ばかりであったこともあるでしょうけれど、「ルチア」の二幕、エンリーコとルチアのデュエットでも、この感じはありましたので、舞台の居方が自然に出来る人みたいです。羽渕君との響きが良く合っていて、このデュエットは楽しみました。この方も、本当にこれからが楽しみ。また、色々ご一緒にお勉強したいと思います。

中々良い勉強をしましたが、一つ面白かったのは、伴奏者の方々。こちらももちろん、十人十色。色んな方がいましたが、やはり心地よいと思うのは、必ずオーケストラを意識して弾いてらっしゃる方。私も存じ上げている方もいらっしゃいましたが、例えば、良くご一緒するコレペティの方が弾いてらっしゃる時は、やはり、伴奏の方にも場面を感じる。つまり、歌われているアリアを、オペラの中の場面の一つとして弾いてらっしゃる。これは経験と言うこともあるのでしょうが、明らかな違いが出ていました。歌い手さんを飾るのですね。

コンクールといえど、やはり私たちの目には、通常の演奏会とかわりありません。この舞台の上で、この3曲をどうお客にアピールするのか。例え、賞に入った方でも、その方の舞台姿など思い出すにつれ、もっともっと、やらねばいけないことなのだと、感じ入った次第です。
実は私は、基本的にアンチ・コンクール派です。だって、芸術に点数なんて意味無いんですもん。でも、たまには、行ってみるもんですね。刺激的な時間でした。(^^)
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by kuniko_maekawa | 2006-07-09 22:45 | 観劇日誌 | Comments(0)