オペラレッスン・リブレットを読む編

昨日、今日とオペラ・レッスン初心者とレッスンをしました。一人は「カルメン」のメルセデスを来年やるというので、そのために今から少しずつ楽譜の情報を得たいという人。もう一人は研究生機関で勉強中で、大学ではずっとドイツ歌曲をやっていて、何故かオペラが勉強したくなり研究生機関に入って、初めてイタリア語に触れ、オペラに触れたという人です。両方とも、まだオペラに触れてから時間が浅く、自分達もどういう風に勉強を進めていったほうがいいのか、迷っているということで、人を介して私のところにいらっしゃいました。
さて、こう言う方々と向き合って、最初にしなければならないことは、まずどうやって台本を読んでいくかと言うことをわかってもらうことです。とは言っても、何か特別なことをやるわけではありません。やることは楽譜に書いてある台詞を読んでいくだけですが、これが中々大変。
さて、オペラの場合は、大抵外国語ですから、それを訳して読み進めていきますよね。しかし、誰彼が語学力に自身があるわけではありません。そこで、登場してくるのが「対訳」と言うものです。これは、外国語の歌詞を日本語に訳したもののことを言います。私自身も語学に完全なる自信があるわけではありませんから、良く利用します。楽譜の概要を知るためにはとても重宝します。先述した二人も、ご自分の楽譜や勉強してるノートに歌詞を写して、その下に対訳を書き入れていました。しかし、それだけでは正しい情報は得られません。なぜならば、対訳は読みやすいように書かれている物も多いからです。CDの解説書やオペラの解説本などは一種の「読み物」として編集されているものですから、読み手に興味を持たせる言葉を選ぶのはしょうがないことでしょう。それに、生活感や国の違いから日本人である私達に理解できる言葉や文章にするということも起こり得ます。それで、あまり鵜呑みにしてしまうと、正しい情報が得られないまま楽曲を理解することになります。それから、イタリア語やフランス語など、日本語とは文章の位置が逆になることもあります。そうなると、楽譜に書き込んだ場合に正しい単語のところに対訳が書かれているとは限らないということもあります。これらを軽く考えてしまうと、「~な感じ」と言うことで、自分の歌うところも、相手の歌うところも解釈してしまい、リアクションを取ることが出来ません。
さて、こう言った自体は先述した二人にも起こりました。レッスンの仕方としては、まず書かれている台詞を原語で読んでもらいます。そして次に意味を聞きます。そうすると、彼女達の答えは対訳の文章を読んでいるもので、自分では直訳をしてないのです。そこで、まずそれを指摘して、出来ても出来なくても良いから、自分で訳してもらいます。そうすると、その文章の中に、対訳には書かれているけど、実際には書かれていない単語や言い回しに気付くわけですね。
皆さん、訳すのが苦手だとおっしゃるかもしれませんが、学術書を作っているわけではありませんから、そんなに完璧に訳す必要はありません。お薦めしているのは、文章を直訳することです。例えば、「Eccomi in lieta vesta・・・Eccomi adorna・・・ come vittima all'ara」と言う文章があります。これはベッリーニ作曲の「カプレーティとモンテッキ」のジュリエッタのアリアの一節ですが、対訳ですと「今、私は婚礼の衣装を着せられ、飾り立てられ、まるで祭壇に捧げられる生贄」となります。こう読むと一つの文章のようですが、先の文章をごらんになると判るように、大文字のEccomiが二つあり、「・・・」の部分もあります。と、言う事は単純に考えても文章は3つ。これを直訳していきますと「喜びの衣装を来て私はここにいる・・・・飾り立てられて私はここにいる・・・まるで祭壇の生贄のように」と、こうなります。この違いがお分かりでしょうか?先の一つの文章で解釈していまうと「Eccomi」の2回目が意味をなさなくなります。単語の訳し方によっても受け取り方はかなり違います。「Romeo potria la  fuggente arrestare anima mia」対訳ですと、「ロミオ様なら私の弱い心を受け止めてくれるわ」しかし、直訳してみると「ロミオは私の心が逃げるのをさえぎることが出来る」となります。これは単語に関する解釈の違いとか、読みやすい言葉にして対訳で伝えるということからおこることです。なんとなくお分かりになるでしょうか?
勘違いしないで頂きたいのは、私は対訳が絶対に間違っていると言っているわけではありません。意味としては正しいのです。当たり前です、専門家が書いているのですから。しかし、自分の読み方で文章を読むということを努力していかないと、役としての言葉が生まれてこないのです。今日、レッスンをしていったクライアントさんは、もっと範囲を広げて勉強していたのですが、一曲自分で訳したところで、頭がパンパンになってしまい、レッスンリタイア。でも、この大変な思いをして訳したものだから、頭に入っていくものなのです。次回は多分、もっと勉強してくることと思います。その楽しさをちょっとわかってくださった感じがしますから。次回は、単語のこともお話しますね。時に先に直訳した文章が間違っていたらご一報ください。私は、完璧であらねば成らないとは思っていないので、御指摘は喜んで受けます。それにしても、毎回レッスンのたびに、気付くことは一杯。本当にこの仕事を選んで良かったと思っています。
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by kuniko_maekawa | 2005-08-27 19:57 | オペラ・レッスン | Comments(0)