2008年 08月 07日 ( 1 )

昨日、無事に「オルフェオとエウリディーチェ」の本番が修了しました。

門仲天井ホールと言うスタジオでのライブでありましたが、60人以上のお客様が客席を埋めてくださり、当初の予定よりも沢山の方に聴いていていただくことが出来ました。

暑い中、会場に足を運んでくださった皆様、本当に本当に、ありがとうございました。

今回のコンセプトは「音演出」
これについては、プログラムの序文に揚げた文がありますので、それを引用させていただきます。

『オペラ作品を演出をする時、この楽譜をどうやって読み込んで立体化するのか、と言う事のみに、私は恐ろしく捉われる。そうしないと、役も舞台もヴィジュアルも創れないと思い込んでいて、恐らくそれは、私の中の唯一の正義だ。
そうやって作品と向き合っている間に、いつしか「音演出」をやってみたいと憧れを持つようになった。
「音演出」とは、私が勝手に創った造語である。楽譜の中にあるすべてを解釈し、それを動機として歌い手たちの中身を刺激し、それに刺激された歌い手たちの中から起こってきた感情を「音」にして伝える。その「音」を創ることに集中することこそが、表情を作り、身体を作り、役を作る。それをやってみたかった。____<以下省略>』

この文章を書いている時に、まさにこのことこそ「私の正義だ」と、初めて気づきました。

こんなに想いをもって、音楽と楽譜と関わっていたなんて、思ってもみなかったことです。

しかし、この「正義」は確実に私の要になり、本番までを支えてくれました。

この「音演出」を叶えてくれたのは、絨毯座の座員であり、ピアノを弾いてくれた野口幸太君と、三人の素晴らしい女声たち。

私のコンセプトに快く乗ってくださり、6月の末から本読みを始めました。

演出家である私がやると言うことで、当然舞台を創るのだと思った方も多かったのですが、今回は、言葉を創りたかったので、形式としては演奏会です。

椅子を3台用意し、スポットを落とし、そこに歌い手たちが立って、ただ、歌うのみ。

しかし、これがどういうことかは私たちはしっかりと理解していました。

演技をするのではなく、語ること。

オペラ歌手にはもっとも嫌なことだろうと思います。

動いて出来る自然な息や、表情などもあるからです。

でも、その動機こそが言葉にある、と分かっているからこそ、今回の試みに乗ってくれた方々です。

時間をかけて、私たちは本当に丁寧に作品を創っていきました。

何度も話し、方向を変え、実に毎週末をひと月あまり。

そして、見事に「語り歌い」が実現したのです。

実は、ある種の人たち?には密かに「前川ワールド」と呼ばれている、私の投げかけ。

自分では意識していないのですが、稽古中は、ただ、ただ、聴こえてくる声や言葉に関して感じたことを喋り続けているだけの機械となっている私。

恐らく喋っていることも、かなり抽象的だったり、映像的だったりすることを、彼女たちは本当に我慢強く、そして楽しくキャッチボールしてくれました。

特に、オルフェオを歌ってくださった、諸 静子さんは1時間ちょっとの今回の作品をずっと歌いっぱなしで、支えてくださいました。
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深い声を持っていて、バイタリティのある彼女の「音言葉」は、聴く人の心を突いたに違いありません。
「オルフェオ」と言う題名にしてもおかしくないほど、メインで歌わなければならず、それぞれの場面で細かい感情の機微があり、非常に難しい役どころを、ゆっくりと時間をかけながら、消化していく忍耐強さ。
そして、それが開花された時の、歌唱の素晴らしさ!
これから本当に楽しみなメッツォです。

そして、「稽古場」等、私のプロダクションに無くてはならないソプラノ、エウリディーチェを歌ってくださった松田麻美さん。
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本当に容姿の美しい方で、立ち姿にも惚れ惚れしますが、素晴らしく良い感性でいつも私のインスピレーションの源です。

期せずして、諸さんと彼女の声の質の相性が良かったのも相乗効果で、お二人のデュエットなど、本当に素晴らしかった。

アモーレは佐藤恵利さん。
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普段は日本オペラが多いせいか、イタリア語を歌唱するのに苦労してらっしゃいましたが、生来の真面目さで、発語はもちろん、歌唱表現としても遜色の無いアモーレとなりました。
明るく、綺麗な声で、どの高さの音でも変わりない響きがあるのはさすが。
子供のような、大人のような、けれど神託を与える神としての役割をきちんと語ってらっしゃいました。

ピアノの野口幸太君は、企画者でありますが、弱冠27歳の若さで音楽を率いて、歌い手と私の橋渡しをやってくれました。

稽古の度に、変わってくる彼のピアノにもインスピレーションを沢山もらい、同時に私の音楽的な要求も、すぐさま形にしてくれると言うアンテナの良さも素晴らしいと思いました。

時に、今回野口君以外は、私も含めて40代。

再三記事にもしましたが、この同年代と言う空間が、私に取っては新鮮で、そして素晴らしく気持ちの良い空間でした。

彼女たちは、まず自分たちの力量に関して、本当に、シビアなくらい冷静に分かっており、出来ることと、出来ないことを、きちんと判断します。

そして、出来ることは最大限に、出来ないことは違うアプローチを探しながら、あるいは、私に求めながら、出来ることに代えていくと言う能力に長けていました。

これが本当に素晴らしかった。

今回、彼女たちと丁寧に作品に向き合えたことが、一番の収穫だと思っています。

「音言葉」がどれくらい出来上がっていて、どんな風にお客様の耳に入ったかはわかりません。

字幕も出しましたが、それによって何を感じて帰っていただいたかも・・。

もちろん、演奏者は本当に良く歌っていました。そして、語っていました。

感動したと言うメールもいただきました。

それで十分。

何かを感じてもらえたら、それが良くても悪くても、十分。

ただ、私と彼女たちで創った「音言葉」を聴いてもらいたかった。

そして、成されました。

私が「正義」だと確信した作品との関わりを、私はもっと確実なものにしたくなりました。

そのために、何をしなくてはいけないか、どのくらいやらなければいけないか、答えはないですが、ずっとずっとこうやって、丁寧に作品と向き合って、創って生きたいです。

この公演を聴いてくださった方々、本当にありがとうございました。

そして、歌い手のみなさん、幸太君、本当に感謝です!


さて、また一歩、足を進めるときが来ました。
靴の紐を締めなおして頑張ります。

いつか「音演出家」と呼ばれるために・・・。
(ちょっとかっこ良過ぎるかな~^^;)
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by kuniko_maekawa | 2008-08-07 23:20 | Comments(0)

オペラ・レッスンのこと、演出のこと、舞台や絵画や色んなことを書きまくっています。


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