カテゴリ:オペラなお仕事( 65 )

地方でのお仕事

本日は長野県の松本市に来ています。9月19日に松本市芸術館の主宰でガラコンサートがあり、その稽古のため。2部構成で後半が「カルメン」のハイライトで、合唱団がなんと200人。子供をあわせると230人あまり。私はこの「カルメン」の演出助手に入っています。
さて、年に何回もありませんが、こう言ったいわゆる「地方オペラ」の仕事に入ることがあります。神奈川や千葉あたりだと、泊まりでお稽古に行くと言う事はありませんが、やはり長野、仙台となると21時まで稽古をした場合、帰りの電車が微妙で泊まりになります。それに大体地方オペラの母体は地元の合唱団だったり、キャストの方も学校の先生や、普通の会社員だったりしますから、彼らの稽古ができる曜日となると、土日が中心。そこでまとめて稽古してしまうわけです。そんなわけで、昨日から松本に入り、この土日を稽古して明日月曜日に東京に戻ります。
ところでこの地方稽古は案外ハードです。なにせ、ただ稽古の為に来ているわけですから、まさに「缶詰」。朝から晩まで、ただ稽古です。例えば、本日の稽古はこんな感じ。

11-12 児童合唱のみの稽古。
13-15 児童合唱団+合唱団(大人)合同立ち稽古
15-17 ソリスト音楽稽古。合唱団立ち稽古
17-18 ソリスト、合唱団合同立ち稽古
18-21 ソリスト立ち稽古

どうです?すごいでしょ?もちろん、間に休憩は挟んでいきますから、時間がずれることもありますし、逆に早く終わることもある場合もあります。それから、地元のスタッフにお願いする場合は、打ち合わせも多くこなします。演出家など、間断無く声を掛けられる感じ。とても大変ではありますが、さすがにこれだけ集中できると、お稽古自体はちゃんとしたものになります。一緒にやってくださる方も、私達も限られた時間と言うことが判っているので必死です。そして、何より合唱団の方々がとにかく一生懸命だし、楽しそう。彼らはもちろんアマチュアで、参加費を支払って舞台に乗ると言う楽しみを持っています。ですから、本当に一生懸命だし、勉強なさいます。そして、舞台が大好きです。
いつもいつも「オペラとはなんぞや」などと嘯(うそ)ぶいている私達も教わることが一杯あります。やっぱり楽しいのが一番ですよね。こう言った公演における演出助手の仕事は、ただただ、出演なさる方々の楽しい気分を壊さないことと、地元の出演者、東京からのゲストの間を埋めていくこと等、普段よりも橋渡しの役割が強いです。でも、ひょっとしたら、普段よりも楽しんでいるかもしれません。それにしても、朝から子供と一緒に舞台を駆け回るのは、40代の身体には少々・・・・・(^^;)。今日も、頑張ってきます!
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by kuniko_maekawa | 2005-08-14 09:59 | オペラなお仕事 | Comments(0)

打ち合わせ

今年下半期、私は演出助手として3本。演出家として一本、公演に携わります。レチターレとこれからやるであろう、朗読会をあわせれば、年内に5本。年明けに一本と言う計算です。これは1年を分けて、結構働いていますし、2本は稽古と本番が重なっていますので、中々行動的な1年と言えます。あまり忙しいことを好まない私としては、不測の出来事ですが、まあ経済的にも潤うし、去年1年を休んだ分のギャップを埋めるためにはちょうどいいかもしれません。
さて、オペラ公演を起こすには、さまざまなプロセスを踏んでいかなければなりません。そのために、「打ち合わせ」と言うものが何十回と繰り返されます。本番までの流れは、だいたい次の通りです。まず、制作が立ち上がり、あるいは既存の歌劇団などで企画が興され、演目が決まります。そうしますと、その作品や団体の要する、指揮者、演出家を選出。ここらで、まず一回目の打ち合わせ。つまり、どれくらいの予算があって、どれくらいの規模を団体が望んでいて、ダブルキャストなのか、シングルキャストなのか、オーケストラは使えるのか等々、大まかな概要が話し合われます。それから演出家、指揮者がそれぞれのスタッフクルーをそろえていきます。指揮者でしたら、副指揮者、ピアニスト、場合によってはオーケストラの人達。演出家の場合は、舞台監督、演出助手、舞台美術、照明、衣装。ここが決まると、次に、オーディション等がある場合は、それをやってキャストを選出します。それから、実際に音楽スタッフは音楽稽古に入ります。さて、演出家のほうは、オーディションが終わり、役が決まると、それぞれのスタッフと個別の打ち合わせを始めます。ここからが、長い道のりです。
まず、最初に演出家とそれぞれのプランナーとのコンセプトの投げ合いをやります。演出家のイメージを伝える作業ですね。それが終わると、最初の段階の絵をそれぞれ描いてきて、演出家と、舞台監督のもとで打ち合わせをします。この個別の打ち合わせを2回くらいやった後に、今度は全員そろったところでの打ち合わせになります。ここにはすべてのプランナーが居ることが望ましいです。ここで、疑問ですよね。舞台美術、衣装、メイクまではなんとなく想像できても、照明とかも参加するの?って。ここが、舞台って総合芸術だなと思うところですが、舞台セット、照明の機材は、すべて舞台上にある空間で仕込まれていきます。もちろん、この段階でプラン自体は舞台美術家のものですが、このセットとそこに立つ歌手に明かりを当てるのは、照明家の仕事。と、言うわけで、舞台セットが実際に立たされる位置。形、これによって照明のラインを創っていくわけですから、当然一緒に打ち合わせをします。特に重要なのは、「吊り物」と呼ばれる、パネルや、幕類。これは舞台の天井に設置されています、可動式のバトンに仕込んで、そのバトンを上下させて舞台上に降りてきたり、上がったりするもの全般をいいますが、そのバトンには照明機材も仕込むわけです。それで、どのバトンを照明さんが使って、どのバトンは舞台美術の方で使うと言った取り決めが重要です。どちらも、ちょうど良い位置というものがあるのですね。それから、ここに衣装さんが居るのは、ひとえに「色」です。舞台美術のセットの色がどういう色が貴重になっているか、照明のコンセプトがどういう色を中心に出してくるか、それによって、衣装デザインを変えなければいけないこともあります。このすべてをまとめているのが舞台監督。私がやっている演出助手はこう言ったプランナーの打ち合わせの場合、話を総合的に聞いておいて、基本的に人の動きについてチェックしていきます。演出家の稽古の様子と、打ち合わせのプランの方向性が違うこともありますから。でも、これはあくまで人の動きに限ります。道具の事や等になると、舞台監督の仕事ですから。こんなわけで、それぞれのセクションで、プランや必要な情報を提供して行くのが打ち合わせです。
それにしても、打ち合わせと言うのは、本当に根気のいる時間です。やはりタイムリミットのあることですから、皆、妥協せずに何度も話を蒸し返していきます。真剣であれば、あるほど、重箱の隅をつつくような話し合いになります。それに、日本のオペラ公演のほとんどは「予算」と言うものがたっぷりあるとは限りませんから(ほとんど無いです)、演出家の方もプランナーの方も、限りある予算内で、ぎりぎりまで頑張ろうとする。どうしても解決のつかないことだと思っても、長い時間をかけて、皆で解決策を練ります。しかし、それも、良い作品を創りたいという思いが強ければ強いほど、こう言った打ち合わせは何度も行われます。そうやって創った舞台は、やはりいいものが出来上がります。しないわけには行きませんね。先月から、隙あらば打ち合わせと言う感じで、下半期の公演の準備をしています。この打ち合わせが終われば、たち稽古に入り、あとは本番に向けて仕上げていくだけ。公演自体は2時間か、3時間で終わってしまうものですが、そこに半年を掛けるのが、醍醐味かもしれません。
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by kuniko_maekawa | 2005-08-09 02:11 | オペラなお仕事 | Comments(0)

演出家2

先の記事では演出家たる仕事の話を書きましたが、演出プランって、どう考えていくものなのでしょうか?こう言うのも、ちょっと面白いでしょ?
とは言うものの、これこそ千差万別、十人十色。それぞれ演出家によって、全然違うと思います。作品のことをしらみつぶしに調べ上げ、知識から理論的に構築する人、まったく何も考えずに稽古場に来てからいきなり作り出す人。プランナーとの付き合い方も、面白いくらいに違います。私は、努力半分勢い半分、みたいな人です。ま、言ってしまえばいい加減って感じですが(笑)。元々勉強するのが好きでないので、若いときは感性があれば良いやと高をくくっていました。それで「写真館」にもアップしてある「蝶々夫人」のころなどは、音を聴いて、思い浮かべた絵を作ったりしてました。なので、その頃はヴィジュアルの方が重視され、映像的感覚が強かったですよね。ところが、その後運命的にわが師匠と出会って、その稽古を見てから、目から鱗。今までの私はアホだった。ということに気づいちゃいました。まあ、何に気づいたかと言う事は、書き出すと長くなるので、次回にしますが、とにかく、感性一発では勝負が出来ない。楽譜を読む力が無ければオペラは演出できないと言うことに気づいたのです。
それがわかってから、私の演出プランの考え方は、大きく変わりました。もっとも、うちの師匠は「しらみつぶし派」ですし、あの頭の良さには勝てませんから、同じことは出来ません。加えてリベラル派でもあり、キャッチボールが最高に上手です。
私は、語学力に自信がないこともあり、まず作品をいただいたら、素直に楽譜を調べることからやります。つまり対訳を書き入れ、辞書を調べる。しかし、この辞書引きにこだわりがあります。
普通対訳を書き入れている時も大抵はイメージが膨らんできますので、思いついたことを楽譜に書き入れていきますが、辞書を引くと、単語のイメージが一気に倍以上ふくらみ、もっと具体的な絵が見えてきて来ます。ですから必ず一つの単語ではおさめません。最低でも10個。再起動詞や、他動詞、比喩、古語、詩的な使い方、単語のイメージだけで演出プランを立ててると言っても過言ではありません。その時点で楽譜は真っ黒(笑)。それから、音を流して楽譜を読みまくります。これは、一番インスピレーションを感じる瞬間で、作曲家の意図を解釈すると言うよりも、共同作業しているような感じがあります。それをやりながら、さらに絵を描いていってから、音を離れて具体的な演出プランを作っていきます。そのときは、逆に音を聴かずに楽譜を読みます。それこそ音楽記号や表記やすべて私にとってはト書きですから、その理由からたちを考えていくのです。そしてさらに音楽を聴いていく。
。こんなことをやってると、なんでも出来そうですが、苦手な作品はあります。特にブッファ系。ロッシーニ、ドニゼッティ、本当に苦手です。だって、音楽があんなに楽しいんですよ、演出が何をするですか、本末転倒。それに、私は外側の勉強が苦手です。歴史的背景、衣装、小道具、そう言う具体的なもののことになると、知らないことが多いですから、図書館などに走るわけですが、必要な資料はあまり多く読みません。私の単純な頭はそうすると想像力をなくしてしまい、薀蓄大魔王のような稽古に成ってしまうので、知識は少しで良いです。せめてプランナー達と話し合うときくらい。後は、ちょっと目の端に止めた写真や絵のイメージを膨らませていきます。なんだか思考がイメージ一辺倒なのです。こう言う理由で、私のヴィジュアルが弱いんじゃないかと言う不安が出てくるわけです。勉強しなくてはいけないと言うのではなく、タイプ的に感性でしか物が考えられないのに、センスがないって言う(笑)。
それはともかく、そんな風にして演出プランは立てますが、コンセプトの要となるのはやはり人間関係。私はわりと、「一番良い人と悪い人」「親子と恋人たち」と言う風に、グループ分けをして、線を引きます。どことどこが同じグループで、どことどこが反目してて、みたいな。そうすると、案外面白ラインが見えてきて、方向性ができるときもあります。メッセージ性はあまり好みませんので、大きなテーマは考えません。枠が決まるのは、どうも苦手で・・・・。
こうして立てたプランは稽古場でもどんどん変わっていきます。もちろん、相手が人間ですから、出来ることと出来ないこともあるし、何より彼らからの投げかけが私の持っているものより面白いこともしばしば。しかし、それをもらわない手はありません。そうやって新しいものが生み出されると、より良い作品が出来上がります。
確かに、こうやって作品を解釈し、作り上げていくことは本当に楽しいです。しかし、それはあくまで作曲家の意図に基づいて、尚且つ自分の色を無くさずにお客様を楽しませる。並みの感性ではやってはいけない気もしてるのです。私の友人曰く「演出家も歌い手も周りが育てるものだ」そうで、こちらがその気は無くても、周りがそうだと思えば、そうならざる終えないのですって。そうかもしれません。と、言うわけで最近は抗うのはやめて、演出家を名乗っているのです。
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by kuniko_maekawa | 2005-07-25 13:25 | オペラなお仕事 | Comments(0)

演出家

本日は(7月24日)演出家「前川クニコ」のお話し。
って言っても、たいしたことはありませんが、来年の1月22日に千葉の旭市で「魔笛」を演出します。東総文化会館というホールが主催で行う自主事業ですが、地元の文化活性をオペラでと言うことで、地元の方々100人集まって、合唱団を結成。キャストもオーディションで選ばれ、今日はその結団式と言うものに指揮の佐藤宏氏とともに参加しました。
結団式と言うのは、最近良く地方オペラでやりますが、顔合わせですよね。キャストと合唱団、制作、それぞれが顔を合わせてご挨拶をし、その後練習をしたり、食事会になったり色々です。私も佐藤氏もご挨拶をし、その後、スケジュールのこと等こまごましたものを話し合い、3時間くらいで東総を後にしました。
さて演出家がどんな仕事をしているのか、皆さんご存知でしょうか?主な仕事は作品のコンセプト(全体の構成や、方向性)を決め、それを形にして行くことですが、実際には、どうやってそのコンセプトを舞台上で形にして行くのでしょうか。
まず依頼が来ましたら、プランナーを選出します。舞台美術、衣装、照明、必要なら振付家。それからキャストをオーディションで決める場合は、そのオーディションにもちろん参加します。
コンセプト、キャスト、具体的な各プランが出たら、何より重要なお仕事である稽古が始まります。この「稽古場」をいかにうまく回していくかが、演出家のもっとも重要な仕事です。ここには、もちろん演出助手もいますが、彼らの仕事はもっと具体的なことです。稽古場の時間と流れを管理していますから。演出家は管理はしません。そう言う意味ではなく、心理的にどう稽古場を作るかと言うことです。歌い手や稽古場をどう扱って、自分の持っていきたい方向に引っ張っていくか。これが出来ないと演出家としては、まず8割がた成立してません。後の3割りは現場での人間関係をどれだけ円滑にできるかです。演出家は内容だけが良くても、認められません。何故なら、彼らの持っているコンセプトは、自分だけでは形に出来ず、必ず人を介してでないと表現されないものです。ですから、どれだけその人達を自分の方向にもっていくかが重要です。スタッフ、制作、歌い手、あらゆる人や、出来事に気を使い、現場をまわしていきます。そうしていながら、すべてのことに対して責任を持たなければならない。ここが大変な仕事だと、いつも思います。なにせ、お弁当がいるかいらないかに始まって、舞台上の大きな構成まで、聞かれることと言ったら千差万別。それにすべて答える忍耐と度量がいります。そして、出来上がったものは良くても悪くても自分の責任。カーテンコールが嫌いになるわけです(笑)。
もちろん団体の大きさによって、やる仕事は減ったり増えたりしますが、決断を常に下すのは同じこと。そうやって人を使っていく能力があれば、結局は、自分の創りたいものを叶えてくれると私は思っています。と、言うわけで今日も一杯答えを出してきました。それもこれも自分のやりよいように、加えて団体にも心地よく、多分、この感じで頑張れば公演も大成功!を想定して(笑)。
私は、中々演出家だと自分の口から言えない時期がありました。作品の内容を解釈することは好きだし、自分でもある程度の自信は持っているのですが、舞台を魅せる能力が欠けているような気がしているのです。つまり、センスが無い。どうしても、そこに自信がもてない。今回は、そう言う意味でも、久しぶりに各プランナーがそろった公演でもあります。この公演をやりこなしたら、少しは演出家としての自信やプライドも育ってくれるだろうと期待して、これからコンセプトを考えていきます。また、途中経過を記事にしますね。ドキュメント「演出家はこうやって創られる」ははは・・・・・(;;)
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by kuniko_maekawa | 2005-07-25 01:44 | オペラなお仕事 | Comments(0)

演出助手

私はトレーナーや演出家に至るまでに、「演出助手」と言うセクションでずっと仕事をしていました。今も、多くはありませんが、特定の演出家のお仕事だけはやっています。
簡単に言えば、映画における助監督のようなもので、演出家のアシスタント作業なのですが、こう言う仕事もあまりお聞き及びでないでしょうから、ちょこっと紹介。
公演団体から依頼がきて仕事が決まると、まず、やらなければいけないのは、出演者の出欠表を元にした、スケジュールつくりです。これによって、稽古内容が決まり、実際の稽古日も捻出できるのですが、これが手がかかる面倒くさい仕事です。なぜかというと、日本の歌い手さんは必ず他の仕事(歌以外です。学校の先生とか)を持っているか、公演を何個も重ねてお仕事してるので、全日出席なんてことは、ほぼ不可能です。これは女声も男声も、レベルの高い歌い手さんであればあるほど、そうなります。男声は100%そうだと言っても過言ではありません。絶対量が少ないので。それで、とにかくルービックキューブの色合わせのように、出欠席を照らし合わせて、日程を出していきます。
しかし、この状態は、あるい程度しようがありません。なぜかというと、日本ではオペラ公演だけやっていても、食べていけないと言う現状があるからです。今は新国立劇場などもあり、ある程度の場所と報酬を得ることはできるかもしれませんが、年間の公演数と出演者の数を考えると、すべての歌い手にいい条件ではありません。何らかの食べる方法をもっていなければ生活できませんから、そのことについてはこちらも譲歩しています。スタッフも同じですからね。しかし、引き受けているのですから、何とかしてもらわなければいけないし、こちらも稽古を組まなければいけません。それで、「交渉」と言うものが必要になります。「こう言う条件を出すので、譲歩して欲しい」と。例えば、「2回お休みを上げますので、是非、その後の3回をください」とか。
これも、若いときは大変でした。こちらも、駆け引きがわからないし、歌い手さんはみんな自分より年上で経験がありますから、まさに、海千山千。言い過ぎても生意気だと怒られますし、言わなきゃ稽古が出来ないし。良く悩んでましたね~。最近は、すっかり経験値だけは上がって、少々のことは怖くなくなりましたから、歌い手さんに苦手がられていますが(笑)。
さて、そんなことをやりながら、演出家と他のプランナーの打ち合わせが始まります。この打ち合わせの前に、しなければいけないこともあります。
まず香盤表。これは、演出家が出すことも多いですが、大抵は先のアシスタントの方で、楽譜に添ったものを出します。簡単に言えば、「出ハケ表」です。つまり、誰がその時舞台上に居るかと言うことを表にしていきます。オペラの場合は、裏歌と言って、舞台袖で声を出すと言うものや、コーラス、バレエと登場人物と場面も多いので、知らない作品だとやっぱりあたふたします。それを元に打ち合わせが進んじゃったりしますから、特に衣装関係などはそうです。ですから、稽古が進んでいくと、改めて「衣装香盤表」と言うものも作ったりします。打ち合わせ以外でも、資料を探す、衣装を観る、こう言うことをやりつつ、やっと本稽古に入ります。稽古における演助の仕事は多種多様。基本的に、演出家の言ったこと、動き、そういったことを記録していき、休んでいた歌い手さんとか、演出家が居ない時の稽古を代行したりします。それから、稽古の進行を見ながら、先のスケジュールを決めていき、またもや交渉。音楽スタッフとも、稽古をしながら、音楽が弱い人に関しての相談や、コーラスが居る場合は、合唱指揮者が居ますから、動きを見てコーラスの声や、位置に問題があった場合は、これまた交渉。それから、稽古には、舞台監督という人が全体の大道具的なことや、稽古場の仕切りをしてくれるのですが、彼らと、稽古の内容や、舞監助手達とのきっかけの合わせ等。とにかく、やることは一杯あります。しかも、文句は言われ放題(笑)。言ってしまえば、乳母やのようなものです。いつもにこにことして、物言いも穏やかで甘えやすく、けれどきちんと叱ってくれて、しかもお料理、お洗濯、お掃除、すべてが完璧。そんな乳母やにあったことありませんが、とにかく、そう言うセクションなのです。
私は演出助手をやり始めて、早17年目に突入。最初は、鼻っ柱だけで、何にも出来ませんでした。それでも、自分の目で見て判断すると言う能力と、変な度胸だけはあったらしく、わけがわからなくても、走り回っていました。ほとんどが勘で・・・。こう言った仕事は職人と一緒で、見て覚えていきます。ですから、良く失敗もしましたし、何が失敗かわからず、他のスタッフから全然口を利いてもらえなくなったり、歌い手を怒らせたり、色んなことをやりました。そうやって、自分の方法を覚えていきます。おかげで、今では、どんな大きさの公演でも、どういった形態でも、仕事をすることが出来るようになりました。
最近はスタッフを志望する若者も私の周りに出てきました。希望に燃えて、何でもやってみたくて、なんだか話を聞いてると、まぶしい感じもします。今は、まったく仕事として演助を捕らえることしか出来なくなっている私には、夢を持ってこの仕事をやり始めたことは遠い昔ですもんね。
もともと演出助手になる人は演出家希望で、ある程度の経験を積んだら、演出家として先を進んでいました。ですから、いわゆる書生さんのような立場で見られていたと思います。報酬も、修行中ということで、きちんとした額ではありませんでした。私が仕事を始めたときでも、「やらせてあげている」と言う風潮は十分残っていました。それを今のようにある程度の仕事にしてくださったのは、私達の先輩達です。そして、それを私達の代が、「演出家」になりたいから「演出助手」をやるのではなくて、「演出助手」を仕事にすると言って、そのまま続けていくようになり、セクションとして認められるようになりました。今では、どこの団体に行っても演出助手の報酬はある程度約束されています。ありがたいことです。
10年経ってやっと一人前になる世界。そこから、自分のやり方を見つけていかなければ成らない仕事です。どこも職人は同じで、今は後継者不足。私もそろそろ、歳だし(笑)、ホールを走り回れなくなる前に、早く若者が育って欲しいものです。
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by kuniko_maekawa | 2005-07-18 21:30 | オペラなお仕事 | Comments(0)

オペラ・レッスンのこと、演出のこと、舞台や絵画や色んなことを書きまくっています。


by kuniko_maekawa