オペラを公演する意味

土日を通して愛媛の松山にいました。「オペラえひめ」と言う団体がありまして、その団体の定期公演の構成をお手伝いさせていただいているので、お稽古のためです。まだ定期公演としては第二回目で、来年は「こうもり」を上演する予定。今年は、その前哨戦として、プッチーニ、ヴェルディのハイライト。それから「こうもり」の2幕を構成舞台にして、上演し、来年に備えようと言うわけです。お稽古自体は二日間で2部構成のものをつけるわけですから、大変でしたが、なんとか仕事を終えて帰ってきました。
さて、私は今、三つの稽古場を掛け持ちしています。それぞれを観てみると、オペラを上演する意味ってなんだろうかと、つくづく思います。一つは、研究生の修了公演です。これは、この先オペラ歌手になりたい人たちに、第一歩を踏ませるために、稽古をしています。ですから、主体は当然のことながら、研究生。決まった授業時間のほか、自主稽古なども含めて、3月の本番まで、毎日何かしら稽古が入ってきます。しかし、この修了公演の本当の意味は、客から学ぶと言うことだと私は思っています。これは先の「魔笛」でもそうでしたが、お客様とのコラポレーションがうまくいけば、それが一番歌い手を育てるのです。オペラ歌手としての一歩を踏み出す彼らに、そのことがどれだけ大切か、わかってもらうことが修了公演をする大きな意味合いだと思います。もう一つは、新国立劇場の稽古場。2月にある本番のアシスタントで入っていますが、ここは、まさにオペラを上演することが、仕事の「劇場」です。歌手も、スタッフもプロ。商業的に成功させるために、稽古場はあります。ですから、歌手達も、スタッフも高いレベルを要求されますし、そのレベルを持って稽古場に入って来る努力をしています。クオリティを要求されるのですね。しかし、現在この劇場は転換期であり、システムの改良など色んな問題も生まれています。上演作品も多いですし、チケット公益も、あまりないとか・・・・。再演を繰り返して、リピーターがつけば良いですが、元々オペラ人口の少ない日本。本来なら、普及のために国立劇場はあるのではないかと思うのですが、ここでの上演の意味は何なんでしょう?
そして、オペラえひめ。地方のオペラ団体にある大きな問題は、団員個々の抱える、生活とお稽古場での温度差です。会員の皆さんはそれぞれ仕事をもっており、なおかつ、愛媛の場合は、稽古場までの距離が遠い方が多く、基本的に松山でお稽古しても、稽古場まで、車で1時間とか2時間とか、かかります。そうなると、お稽古できるのは週末のみ。つまり、稽古場で受ける刺激よりも、日常生活のほうが割合が多いわけです。これは、中々大変なことだと思います。皆さん、やる気満々で、素晴らしい声の持ち主も多く、お稽古を楽しんでくださっていますが、次の稽古まで、まったく違う生活をしていると、そのモチベーションが上がるまでに、時間がかかって、結局膨らますことが、難しくなります。詰めなければ、こなせないし、何より精神的なテンションが上がらなくなるのです。それでも、オペラがやりたくて、皆さん集まってくる。この土日の稽古は感じるものがありました。
どの稽古場でも、基本は「オペラが好き」だと言うことでしょうが、私はオペラえひめのような、日常の中の、オペラを思う気持ちがすごく良いと思いましたし、好きでした。もちろん、クオリティを求めれば、もっとやらなければいけないことはあると思います。でも、始まりは「やりたい」と思う強い気持ちです。逆を言えば、それを一週間思いつづけて、恋焦がれるように、稽古場に彼らは来るのです。その気持ちに答えられるモチベーションがこちらにあれば、やはり良い公演になるのだと思います。外側ばかり大きくて、中身の無いどこかの稽古場に比べれば、天国のよう(;;)
難しいのは、その「日常の中の、オペラを思う気持ち」を、どこまでお客様のために使うかです。「好きだから、やりたい。聴いて欲しい。」をベースに、「楽しませたい、感動させたい。」と言う気持ちが、どれだけ育つか。本当に、頑張って未来をつなげて欲しい団体です。そして、同じように、気持ちを持ってくださるお客様を育てて欲しい。そうすれば、きっと松山にも素敵なオペラの芽が芽吹くと思います。本当は、私達スタッフが今やらないといけないことも、こう言った芽を増やすことかもしれません。そうでなければ、今の日本でオペラを上演する意味って無いような気がしています。だって、まだまだ発展途上国なんですから。学ぶべきことは山積みです!
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by kuniko_maekawa | 2006-01-31 00:33 | トレーナーのつぶやき | Comments(1)

東総文化会館ホールオペラ「魔笛」

昨日、無事に本番があけました。一回公演でしたので、開けてしまえばあっという間。しかし、公演は大成功でした。
今回は、千葉県芸術振興財団の20周年記念事業ということで、ホールの全面協力の下、公演をなしえたわけですが、ホールの技術の方々、制作の方々、本当に、良くしていただきました。まず、稽古場に、本舞台を組んでくださって、そこで稽古ができたこと。それから、今回仕込みから本番まで3日間でしたが、それまでの、大道具の製作、仕込みに入っての時間の延長など、こう言った協力が無ければ、まったく成り立たない舞台でした。
スタッフワークも、すばらしく。舞台監督の大澤さん始め、衣装の前岡直子さん、舞台美術の二村周作君、照明の稲葉直人君、すばらしく綺麗な舞台を創ってくれました。今回は、予算的なことは、結構厳しかったのですが、そこの中から、色々ひねり出して、びっくりするほど綺麗な空間が生まれてました。照明が入ると、どうしてもフラッシュが焚けないので、空舞台ですが、写真館の方に、アップしておきます。しかし、何より、嬉しかったのは、創りながら楽しんでもらったことです。彼らは、まだ若く、これからの人たちで、私には無い感性を一杯持っています。尚且つ、「なんでもやりますよ」と言う、情熱とエネルギーをもっており、そこに、胸を借りることが出来ました。また、是非、彼らと舞台を創りたいです。
ソリストの方々は、今回本当に頑張りました。オーディションで選ばれ、縁を結ぶことが出来ましたが、少ない稽古の中で、私の投げかけを一生懸命受け取って、真摯にこなしてくれました。何より、本番の舞台で、彼らの中にある音楽が、ちゃんと目ざめてくれたこと。きっと、今ある自分の枠を、どんどんと破っていかなければいけなかったでしょうが、それが、先に続くプロセスだとわかってくださったのではないでしょうか。素晴らしかったと思います。彼らのこの先の活躍が本当に楽しみです。
合唱団、児童合唱団も、元気一杯楽しく歌っていました。何より、客席が楽しかった。お客様が直接わかる顔が舞台に上がってくると、急に、客席がざわざわ・・・・。試練の場面になると、どこかで子供が、「燃えてるね~」(笑)。私は、こう言った客席の反応がすごく好きです。拍手もことあるごとに、一杯してくれました。オペラなんて、高尚なものではない、元々は、食事をしたり、話しをしたりしながら、楽しまれていたものです。こういう姿が本来だと思っています。しかし、それも、舞台がちゃんと成立していたから、起こりえたこと。公演は本当に大成功でした。
私は、自分の演出家としての才能や、裁量なんて、等に限界を感じていますが、それでも、望んでくださる場がある限り、こうやって舞台を創りつづけようと思います。楽しんでもらえる喜びは、何ものにも、変えがたいですから。本当に、関わってくださった方、私を呼んでくださった方、ソリスト、合唱団、スタッフ、皆さんに感謝しています。何より、ご来場くださったお客様、私たちを育ててくださって、ありがとうございました!
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by kuniko_maekawa | 2006-01-23 12:29 | オペラなお仕事 | Comments(4)

照明

いやいや、怒涛の詰め稽古が終わりました。14日から昨日までの4日間の中で、私がやらなければいけなかった仕事の中に、前回の記事でも書きました、スタッフワークがありました。今回は、ホールの共催ですから、舞台の仕込みや、製作、事務的なことも、すべてホールが主体でやっています。ですので、実際の舞台で稽古が出来るわけですが、今度は本番のために、セットとして、飾らなければいけません。そのために、16日には、舞台監督以下、舞台美術、照明の各プランナーも来てくださり、打ち合わせ等忙しく過ごしました。
さて、スタッフワークの中でも、とりわけ神経質になるのが、照明です。これは、いつでも、どの舞台でもそうですが、一番視覚的に、お客様を刺激し、作品全体に影響を与えるものですし、何より、明かりを出してみないと、具体的なものがわからない。加えて、私は、ひどい感覚人間で、照明の知識も余りありません。こんな状態ですから、話すことは、イメージの羅列になってしまいます。例えば、「最初は綺麗な森なんだけど、そこに、変な物体が出てきたら、エイリアンみたいな細胞になって、その細胞が、どくどくしてるとか・・・・みたいな・・・・」・・・・(^^;)
こんなことしか言えませんから、自分でも、それがどんなものになるのか、まったく見当がついていません。しかし、これは照明さんに言わせると、同じことだそうで、やはりプランナーと言えども、彼らも明かりを出してみないとわからないことはあるのだそうです。ですから、イメージで作っていくのは同じで、むしろ、細かく言われた方が、制約が出来てしまって、出来ないことが多くなるとおっしゃっていました。なるほど、ちょっと安心。
今回は、色んな意味で私が普段やってないようなことをやってみようと思っています。元々は、オーソドックスな形とか、誰が観ても綺麗な色が好きですが、今回の照明プランナーの稲葉直人さんは、色や形、例えば、明かりを落とすポイントみたいなものが、面白く、私の予想できないものを目の前に出してきてくれる人です。この作品の演出のお話が出たときに、丁度ご一緒していて、一緒に作ったら私の気づかないものをだしてくれるかも・・・・、なんて勝手に思い、声を掛けさせていただきました。一応、昨日、時間をかけて打ち合わせをして、私と稲葉君との間では、どきどきながら、「やってみましょうか~」と、GOサイン。明日、稽古前に、実際に明かりを変化させていくタイミングを打ち合わせしたら、後は、舞台で明かりを出して具体的なものを作っていく作業に移ります。しかし、ここまで来ると、稽古は修了しており、本番まで後少し、という秒読みでもあります。私という演出家の力量はここから。まだ力が抜けません。(;;)でも、やはり本番に近づくにつれ、皆さんのテンションも上がってきますから、段々に良い感じになってきています。後は、楽しんで本番を歌ってくださるのみです。私は、もう一分張り舞台の外側を作り上げ、出演者達に託します。皆さんに、演出家にさせていただいているのだと、ほんとに実感しています。
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by kuniko_maekawa | 2006-01-18 11:37 | オペラなお仕事 | Comments(0)

スタッフワーク

「魔笛」の本番まで、後9日となりました。明日から、また旭まで行っての詰め稽古になりますが、ここから先の、私の仕事は仕上げとスタッフワークです。つまり、衣装あわせ、舞台セットの仕上げ、照明、そういったものをチェックしていくこと。稽古自体は、後、一ふんばり、返し稽古をすれば良いですから、歌い手達も、どんどん体調を調節して本番に備えてくれれば良いですが、スタッフは、これから先が勝負です。まず、出来上がった稽古を見てもらい、実際に舞台をどう飾るかを話し合っていきます。私的には、これからの作業の方が、緊張します。
昔、15年程前に、まだ演出家になりたかった頃は、こう言った舞台を飾ること、どう客に見せるかと言うことが、楽しくてしょうがありませんでした。その頃は、演出家の仕事は感性だと思っていたからです。今は、そんな馬鹿なこと、まったく考えていませんから、この「見せる」と言う作業が、一番怖いです。内容を創っている方が、まだ、良い。それに、今回は、少ない予算とわかっていても、オペラを経験したいスタッフが集まってくれましたから、それにも答えたい。肩を張っているというわけではありませんが、こうやって、歌い手やスタッフに演出家にさせてもらっていると言う、思いがあるからです。
それにしても、今回は演出家をやって良かったと、本当に思っています。スタッフとの付き合い、予算の調整、歌い手とのかかわり。憧れだけもって「演出家になりたい」と思っていたときと、私自身も違いますから、舞台を創るまでのプロセスが、本当に具体的にわかります。身になっていると感じるのです。以前は、創った舞台や稽古の内容を、認めて欲しかったし、誉められたかった。しかし、今回は、「仕事」として稽古場があり、舞台があるのが実感できます。何より、どれだけの人を関わらせているか・・・。彼らをも、満足させる現場を作るのが演出家の仕事だと、本当に実感できます。さて、頑張りますよ。私が彼らに出来ることは、良い舞台を創ることだけですから。
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by kuniko_maekawa | 2006-01-13 12:44 | オペラなお仕事 | Comments(0)

空間を感じると言うこと

先の記事でも書きましたが、昨日まで、詰め稽古成るものをしていました。今日は久しぶりに稽古場を離れて、身体の具合を治しています。次の稽古は14日からで、本番一週間前。もう、細かいことではなくて、流れを作っていき、スタッフワークが私の仕事となります。
さて、今回は東総文化会館の主宰ということで、ホールの方も全面協力。本舞台で、基本台を組んでの稽古が実現しました。もう、これはすごいことです!日本には劇場と言うものがありませんから、本舞台で稽古するのはせいぜい4日くらい前です。それも、新国立劇場が出来てから、実現するようになりましたから、それまでは、GPからしか立って稽古できませんでした。しかし、今回は、それをさらに上回って、おおよそ一月前からそれが可能になっています。年明けからは全部の稽古が本舞台で、基本セットの上でなされているのです。これにどういうメリットがあるか、お分かりですか?まず、私的には、実際に創る舞台の上で、人が動いているのを観ながらの稽古ですから、絵が見えますし、空間の取り方や、流れなどが非常に創りやすいです。歌い手の方は、もちろん、実際の舞台でのサイズ、見え方、何より、自分の周りの空間を感じながら歌うことが出来ます。音楽が大きくなってくるのです。人は、いる場所によってサイズが決まりますから、稽古場でばかりやっていると、そのサイズで自分を作ってしまいます。しかし、舞台の空間は倍以上。しかも、客席にはお客の目がある。それを意識しながら役を創っていくことが出来る。それは、同時に歌い手を育てていきます。今回は、ホールの協力によって、それが可能となりました。本当にありがたいことです。
しかしながら、このホールで稽古をしていても、中々客席に、表現が渡されにくいのが現状です。まだ、やっていることをこなすのに、時間がかかっているのですね。身体は自然に着いてきている。歌も、大きくなってきている。後は、歌っている人たちが、その空間に立っていると、もっと意識できると、ぐん!と変わるのですが・・・・・。ここから先の稽古は、そのための稽古です。そして、本番では、ただ伸び伸びと、楽しく歌ってくれれば、それで大成功です!
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by kuniko_maekawa | 2006-01-10 12:40 | オペラなお仕事 | Comments(0)

ただいま、詰め稽古中

4日から始まった、稽古も、早や5日目。このところ、「魔笛」のために、毎日、千葉の旭と言うところまで通っています。途中、千葉市内も一日ありましたが、毎日稽古をしていると、稽古場への距離感はあまり関係ないみたいです。本番まで、後、二週間となってきました。明日まで稽古をしたら、また4日ほど空いて、その後一週間は、通し稽古をして、仕込をして、GPをして、本番。あっという間ですね。
もちろん、大抵の演出家はそうでしょうが、一度大まかな、動きを渡してしまったら、各場面を丁寧に稽古をしていくことをやります。私の場合も、ご多分に漏れずで、今現在、そうした「詰め稽古」をしている最中です。これをやっておかないと、本当の意図や、歌い手さんたちとのコラポレーションがうまくいきません。色んなことを話しながら、逆に、彼らからももらいながら、場面を創っていく作業は、大変ですが、やはり楽しいです。以前にも、記事にしましたが、今回は、稽古場で「生まれる」物を一杯見つけたかったので、詰め稽古をしながらも、あまり歌い手さんとの距離を近くする努力はしませんでした。あまり近すぎても、結局は私のロボットを創るだけですし、逆に、遠すぎても、こちらの真意が伝わらないと言う、難しいところですが、私は外側を用意し、歌い手は音楽を解釈する。この仕事がうまくいけば、本当に面白いと思っているのです。
ここまでのところ、まだうまくいっているのかどうかは、わかりません。細かい稽古をしたばかりのときは、歌い手さんの気持ちは膨らむのですが、それが、客席に発散されるのに、もう少し時間が要ります。一昨日から、マエストロもいらっしゃいましたから、これから、もっと音楽が中心になってきます。その時膨らんだものが、音楽と一緒に客席に届くのが理想です。後少し。みんな善戦しています。私も、もう一頑張りです。きっと良い本番になると信じています。みんなが、そう信じているから、大丈夫なんです。
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by kuniko_maekawa | 2006-01-09 00:08 | オペラなお仕事 | Comments(0)

稽古始め

さてさて、オペラのグログは今日が筆始めでございます。本年も、どうぞ、ご愛顧に。
本日は「魔笛」の稽古始めでした。稽古会場であり千葉文化会館も、仕事始めと言うことで、人もおらずに、もくもくと稽古をしましたが、やはり、お正月を挟んで、皆さん、それなりにリラックスなさったみたいで、ある意味、新鮮でした。私も、久しぶりに、演出家の目に戻りましたので、新鮮に稽古見ました。
今回、私の行っていることは、歌い手との共同作業です。もちろん、私の持っているラインを死守しながら、どこまで、歌い手さん達の身体を自由にしていくか、そして自由になった、身体に、彼ら自身が、それぞれの役の卵を産み付け、育てていくことを、どこまでサポートしていけるか。
今日やった稽古では、少しですが、皆さんの身体が自由になってきた感じがしました。こいつは年明けから縁起が良いや!ってな具合です。しかし、ここからが最初の1歩。本番の幕が開く瞬間まで、その作業をやりつづけるのが、私の仕事です。がんばりますよ。
今年も、たくさんの経験を積み、たくさんの歌い手さんと仕事をし、あるいは、トレーナー作業をし、学んでいこうと思います。私のオペラ道を、どうぞお楽しみに!
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by kuniko_maekawa | 2006-01-04 22:27 | オペラなお仕事 | Comments(0)