スタッフとのお付き合い

先日の現場で、いつも私のプランナーをやってくれている照明さんとご一緒しました。

彼はまだ30代の前半ながら、良い感性と真面目な仕事で、照明家として段々に名前が出始めています。

私も彼とやるときは、いったいどんなことになるのかと、いつもどきどきしながら、彼が出す明かりを見ています。
でも、いつも私が思っている以上の絵が出来上がってきて、感心することしきり。どれだけ彼の明かりが私の舞台を助けてくれているか・・・・。

それで、打ち合わせ中や本番の後など、話をするときも、若いとはいえやっぱりプランナー。何かちゃんとした話をしないといけない気にもなり、いつもちょっと緊張しながら話をしていました。

彼自身はにこにこと、気さくに話しかけてくださるので、気を使うことは全然ないのですが、私が構えてしまうのでしょうね。

ところが、今回彼はプランナーではなく、チーフで入っており(他の言い方があったんですが、忘れました~)私は制作補助。なんかいつもと違う感じです。

今回の現場は、演出家が舞台も照明も何もかもやる人で、おまけにDVD撮りがあり、そのために、初日が開けても、毎日のように朝10時から22時まで明かりあわせをやっていました。

彼もず~っとそれに付き合っていましたから、さすがにストレスがあったらしく、私の顔を観ては挨拶がてら、油を売っていました。
おかげですっかり仲良し。最終日には打ち上げを約束して劇場を離れました。

ちょっとへ~んな感じ(笑)。

私は普段、舞台関係者とあまりお付き合いがありません。
もちろん、現場を共にしたり、稽古を一緒にしたりすれば、飲みに行ったり、打ち合わせがてら食事したりと言うことはありますが、基本的にプライベートではそう言うことがありません。

なんででしょうね。
多分一線引いておかないと、いざ仕事に入ったときに馴れ合ってしまうからかもしれません。

私にとっては舞台監督や照明家の目は、私の絵を違う感覚で見直してくれるものであり、それが同じ目になりたくないと言うことでしょうか。

ですから、最初、彼が楽屋に遊びに来てくれたときも、何を話して良いのやら。

これが歌い手とかならば、経験で話も出来るのですが、照明と言う仕事自体、私に良くわかってなく、加えて私自身が彼のことを尊敬して、一目置いてますから、経験でも話が出来ない・・・。

でも、目の前の彼は33歳の普通の青年で、疲れた~などと言っている。

段々慣れてきて、ちゃんとお話できるようなりましたけど、しばらくあたふたしていました(笑)。

今度飲み会をするのですが、照明さんとじっくり話をするのは初めてです。
色々と聞きたいことも沢山。良き繋がりになりました。

私も少しは環境を変えて、知らない分野の人たちとも話す機会を増やすべきかもしれません。
私と違う目を持つ彼らを、今度は心を開いて受け入れることが必要だと思います。

びびりの私には難しいのですが・・・・。でも、楽しみにして。
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by kuniko_maekawa | 2007-07-31 00:06 | 演出家のつぶやき | Comments(0)

新国立劇場研修生7月リサイタル

と、言う名称だったかどうか忘れましたが、昨日ご招待いただいて行って来ました。

これはご存知新国立劇場にある研修制度に所属している人たちの試演会。

他の研究生機関のように、オペラのアンサンブルをハイライトを演じていきます。

所長である海老沢敏氏が開演の前にご挨拶でおっしゃっていた言葉。

「私は研究者ですから、演じる側がどういうことをやっているのか理解できませんが(と、言うようなことをおっしゃいました)お稽古を進めていくにつれて、彼らが良い経験をしているのはわかりました。」

まさに、その言葉通りの試演会でした。

まず、場所である小劇場は、お芝居のための空間で、本来しゃべる声に適した音響になっており、すべての響きを排除していますから、どんなに頑張って歌っても、歌声がデットになってしまって、本来の声が聴こえません。

衣装をつけ、メイクをしていましたが、きちんとした着付けでもなく、大抵は自前の衣装に最低限の小道具。新国立劇場はあれだけの舞台を毎回やっています。その舞台に研修生を乗せるつもりならば、同じようなメイク、衣装が施されてもよいでしょうに。

演出家はアメリカ人のようでしたが、それぞれの作品を台詞で構成して行き、それ自体は流れが悪くはありませんでしたが、一つ一つのScenaに対しては、外側の形のみ形成されており、リブレットの影響力は感じませんでした。

それは演じる方の力量もあるのでしょうが、まず、音楽が聴こえてこない。
劇場の響きが悪いのも手伝って、彼らの中の音楽性を発奮させるような演出ではありませんでした。

本来ならば、これでも許される範囲の試演会ではあります。
しかし、これが新国立劇場の研修生だから、腹が立つのです。

この研修生達は、月々20万ほどの教育費をもらって勉強をしています。

つまり、サラリーマンのように、月々の給金をもらってオペラ歌手になるために勉強しているというわけです。

3年間の間、他の現場に出ることを許されず、この機関の中だけで朝10時から16時まで歌いっぱなしです。

外側から見れば、お金をもらって勉強できるという、このシステムに魅力があるらしく、毎回応募者も多いらしいですが、逆を言えば、そこだけで3年間雇われているのと同じこと。

なのにも関わらず、歌い手の現場が理解できない所長と、オペラ歌手にとっては最悪のホールで歌わせること、きちんとした衣装のさばきや、小道具のさばきも扱わせない、すべて予算が無く、しかし、場は与えるという、すべてのことが大義名分のもと行われるこの研修制度の曖昧さが良くわかります。

この3年間が終わった後、彼らに新国立劇場の主役が待っているかといえば、そんなことありません。

相変わらず外人がやってきて、せいぜい一言、二言の役をもらうだけです。

国の税金を使って、これだけの歌い手を育てようとするのならば、あまりにもレベルが低すぎますよ。

このシステムが悪いというのではありません。

この研修所にヴィジョンがなさすぎるのだと思っています。

これだけの講師、これだけのメニューを彼らがこなしていく上で、彼らが自分のためにチョイスできることが出来るのか、例えば、自分はフランス物を極める歌手になる、そのためにフランス語や、フランス歌曲、オペラを指導してくれる人を選びたい、といったことです。

新国にしてみても、世界への発信として、自分の劇場で育てたオペラ歌手を作品に載せる際、フランスものならば、この歌手。和物ならばこの歌手。イタリア物ならばこの歌手、と、世界へ提示できる歌い手を育てるべきではないでしょうか?それこそ、劇場で研修生を募る意味があると思います。

新国立劇場で行われているもことは、すべてが私たちの税金です。

それだけでも、文句を言う権利がこちらにあります。

ちゃんと音楽のわかる所長、歌い手をどう育てるかと言うヴィジョンを持って選ばれた講師、それを選ぶ権利を歌い手が学べる環境であること。

結局ただ自分達のシステムを与えるだけの研修所には、やはり何も期待できません。

それがまたはっきりとしたコンサートでありました。
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by kuniko_maekawa | 2007-07-29 15:02 | 観劇日誌 | Comments(2)

絨毯座ワークショップ「オペラ・プラス」

昨日から、ワークショップを行っています。
これは、絨毯座という団体の主催で、オペラの歌い手達のためのワークショップと言うことで、5月から4つの枠が組まれています。

今月から私の枠が始まりました。
題して「喋ることは歌うこと。歌うことは喋る事」

3つのオペラ作品のScenaを題材に、言葉をどうしゃべっていくかと言う欲求をモチベーションに、楽曲を表現してみることをやろうとしています。

期間は今月は25.26.27日。楽曲はモンテヴェルディ作曲の「ポッペアの戴冠」。

8月1,2,3日でモーツアルトの「ドン・ジョヴァンニ」。そして、9月20,21,22日でチマローザの「秘密の結婚」をやります。

昨日、今日と「ポッペアの戴冠」を4人の受講者と共に作っています。

やり方は、いつも私がやっている「稽古場」と同じ形。

まず初日である昨日は、楽譜とリブレットの内容を探して行きながら、それをどう歌って表現とするか、と言うことを試してみました。

今日は、少し体を動かしながら、歌うということから、どう体を開放させていくかと言うことをお試し稽古。

「ポッペアの戴冠」と言う作品は、実在したローマ皇帝ネロとその妻ポッペアが結婚し、王と王妃になるまでの話ですが、時代的に、まだ小節線が無く、音符も白玉が並んでいるだけ。
演奏者の力量が非常に重要視された時代のものです。

当然、その演奏者の力量をアップさせるような台詞が書かれており、戯曲作家の仕事も非常に重要でした。

そのせいか、主役級だけでなく、脇役、例えば、野心を持ったポッペアに裏切られた元夫のオットーネ、ネロの妻オッターヴィア、ネロに殺された腹心セネカ等、こういった周りを固める役も、それぞれにきちんとした台詞を与えられています。

今回、私が受講者の皆さんに伝えたいのは、この台詞を如何様でも、演奏者が扱えるということ。

今現在、小節線が楽譜上にあっても、その小節線を外して考えられる自由がこの楽曲にはあるのです。それを想像してよい、時代のものなのですね。

受講者はほとんどが、昨年研究生を修了した人たち。
丁度、その修了生たちが修了公演でこの作品をやったので、思い入れもあって、申し込んでくれたようです。

そのために、作品自体は歌いなれているのですが、歌いなれているからこそ、自由さが失われています。

昨日はまず、楽曲を感じることからやってみました。

例えば、歌っている最中に聴こえてくるオケの音。

この時代は、元々古楽器ですから、オケの音もどこか弦楽器や太鼓が聴こえてきそうな感じがします。

しかし、その音に背中を押されることに歌い手は慣れていません。
歌いながら流れてくる音が、まったく耳に入ってないみたいです。

そう言うところを細かく指摘させてもらって、段々に耳や体を刺激していきます。

今日は、その上で、今度は自分が発してる言葉からどう言う動きを体が欲求していくかを試してみました。

これも、歌いながら、動きながら、発している言葉のイメージをしつこく言わせてもらって、なんとか刺激を促して見ます。

しかし、両日、中々受講者達は解放されてきません。

無理もありません。ある意味、規則正しい稽古の仕方ではないし、今まで突かれたことないところを突いているわけですから、まず、パニック。

一回3時間を4人で分けますから、時間も物理的に短いです。

とにかく、目に見えているもの、聴こえてくるものはこうだ、と言うことをず~っと言わせていただいて、やっと何か少し動いてくるという感じでした。

でも、変わってきます。

たった一つの言葉、たった一つのサディスション、何か受講者達のアンテナに引っかかるものが、ふっと彼らを変えて行きます。

私のやっていることがワークショップと言うのかどうかはわかりませんが、少しでも、アンテナがするどくなって、今まで無かった自分が見えてくれば、それでいいとおもっています。

明日は「ポッペア」組みの最終日。
今までを踏まえたうえで、今度は演出である私の欲求を、受講者達の言葉に変えていってもらいます。

なんにせよ、自分達の言葉をどう言う形で伝えるか、そこに神経がどれくらい集中し、快感を得ることができるかと言うことなんですね。

こういうワークショップは楽しいのですが、実はすごく疲れます。

エネルギーをとられるどころではない、やはり、お金を出して、何かを得たい人たちですから、出来るだけ一杯得させてあげたいと思います。

明日も頑張らねばっ!

このワークショップは見学も可です。ご希望の方はコメントくだされば、詳細をお知らせします!

神さまにいただいた仕事は、いつも結構きっついです~(^^;)。ありがたや、ありがたや!
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by kuniko_maekawa | 2007-07-26 23:33 | オペラなお仕事 | Comments(0)

オペラ三昧公演「レインボーブリッジに吠えろ!」

やっと伝説の公演に行ってきました。

オペラ三昧は藤原歌劇団準団員のバリトン秋本健君、二期会会員のソプラノ菊地美奈さん、メゾの牧野真由美さん、二期会会員の岡本泰寛君ら4人が、様々なオペラのデュエットやアリアを使って、全く別のストーリーによって構成していくエンターテナー番組です(笑)。

もう、何年も前から公演自体はやっていて、毎回お客様を爆笑の渦に巻き込んでいるらしく、私の中ではまさに「伝説」になっていました。

どうしても今までタイミングが悪く、観にいけなかったのです。

昨日は、偶然二人、レッスン生が休みになったので、喜び勇んでいってまいりました。

いや~、面白かった~!
笑った、笑った!どうしてこんなにも面白いことが出来るのか、かなりべたな笑いですが、腹がよじれるくらい笑いました。

物語は、レインボー・ハニーと言う宝石泥棒とそれを追いかける刑事達の奔走を描いているもので、良くある話ではありますが、この台本と構成をした牧野真由美さんの才能に愕然。

彼女とは以前、一度だけご一緒したことあるのですが、その時も、類稀な歌唱力と、表現力に感嘆しましたが、舞台の上でお客様を笑わせるその才能ったらばすごい!絶対に、本人のセンスが良くなければこんなこと出来ません。素晴らしいです~!

その物語の間に入ってくる、デュエットやアリアは、私にもなじみのあるもの。
しかし、その本来の内容は、ベースだけ残して、後は完全に別のものが演じられていきます。

例えば、「カルメン」のホセとミカエラの手紙の二重唱は、ハニーを追いかける刑事の幼少の話になり、お母さんと息子がどれだけ受験戦争を頑張るかと言うシーンに変わっており、

「仮面舞踏会」のアズチェーナの有名なアリアは、ハニーと刑事の攻防戦の様子に変えられて、時々歌詞と内容があっちゃうのがまたおかしく、わかる人にはなお更楽しめるないようになっていました。

しかし、圧巻なのは、彼らが4人とも、素晴らしい歌手であるということ。

三昧以外でもお仕事がご一緒になる4人ですが、どのお仕事でも重要な役をやり、公演の要になるような人たちです。もちろん、歌えます!だからこそ、この構成がおふざけにならない。

物語部分も、全身全霊。
恥もてらいもなく(?)、真っ向勝負の芝居と歌ですから、レベルの高いこと!
本当に「伝説」の舞台になりました。

同時に舞台を観ながら、演出家ってやっぱりつまんない職業だな~って思ってました(笑)。

やっている方の力量や才能の方が、絶対に勝ってる。

私たちは、しかめつらしく、乗り手の粗を探して、客に媚を売って、正しいことをやっているような顔してますが、自分では何も出来ない。

こんな風に、才能を持っている人たちが真っ向勝負をかけてきたら、絶対に勝てないな~って。

私も、こう言う舞台を創るならば、演出しないで出演したいですもん(笑)。

とにかく、本当に楽しめる、極上のエンターテーメントでした!(^^)
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by kuniko_maekawa | 2007-07-25 13:23 | 観劇日誌 | Comments(0)