NY・アンバサダー劇場公演「シカゴ」

先週NYへ行ってました。

こう書くとかなりカッコいいですが(^^;)、もちろん理由あってのことで、たった3泊の旅でしたが、かなりエキサイティングな経験をしてきました。

道中のことは「うさぎや日記」に書くとして、ここではやっぱりエンターテーメント。

この旅でのメインは取り合えずメトロポリタン・オペラと思ってましたが、期せずして一番アメリカの底力を見ちゃったのが、やっぱりミュージカルでした。

観てきたのはアンバサダー劇場でロングランしている「シカゴ」。
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日本でも何回も上演され、今も米倉涼子や河村隆一などで上演されていますよね。
もしかしてご覧になった方もいらっしゃるかも。

古くは草笛光子さんや鳳蘭さんなんかも出演してらっしゃって、映画にもなったから、結構馴染みのある話。

しかし、やっぱりすごい!

何がすごいって、出演者の実力と層の厚さ、それにバンドのうまさ、演出云々とかよりも、そこに圧倒されました。

「上手い」なんて、今更どうかと言う感想ですけど、それ以外に言いようが無いんですよ。本当に。

皆さんも御存知だと思いますが、ブロードウエイで年間上演される舞台は、オフも含めて、50弱。
今手元にあるPlayBillという情報誌でも47公演あります。

それぞれに20人出演者がいたとしても、たったの100人しか舞台に乗れない。
50人いても、250人。100人いても5000人。

5000人なら凄いって思います?

いや~、一回公演を観たら、それこそぞっとします。

その5000人は、相当なレベルを持った5000人だからです。

つまり、もし、それだけの人数が毎回乗れているとしたら、それだけのレベルか、それ以上のレベルの人間が、どれだけNYに集まってきているかと言うことなんですよ。

この公演数は、オン・オフ両方合わせた数ですから、当然、載れる人数はもっと少ないわけで、その針の穴を目指して、すごい数の人が日夜レッスンに明け暮れて、オーディションに明け暮れているわけです。

舞台に乗ったからといって、安心は出来ません。
怪我や不評、いろんな問題は起きてきます。

その都度、自分以上のレベルを持った人間が、まるでくもの糸の囚人たちみたいに、足元にぶら下がっていると思ったら、恐ろしい以外に何ものでもない。

そういうことを現実として思わせられた公演だったんですね。

物語は単純です。
ロキシーというしがないコーラスガールが、浮気した恋人を射殺して刑務所に入れられる。
このままだと縛り首になるところを、マスコミに強い敏腕弁護士ビリーに頼んで、一躍スターにしてもらう。
実はロキシーが入る前に、ヴェルマと言うコーラスガールが、やはりビリーの手腕でマスコミの同情を買ってスタートして扱われていた。ロキシーはビリーの手はずでスターになっていくが、結局は裏切られ、出所したヴェルマと自分たちのショーを作るという話し。

アンバサダー劇場は古く、有名な劇場で、トニー賞を取った作品の常連宿です。
あんまり撮影できませんでしたが、どこかビクトリア時代の名残のような内装。シートも古くて暗い。
歌舞伎座のような雰囲気があります。
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座ったのは二階席でしたが、客席と舞台が本当に近い感じ。
マイクを使ってはいますが、息遣いが聴こえてきそうな感じでした。

舞台はシンプルなスクエアが一つ。
そこにバンドと指揮者が入っていて、役者はその四角い建物の外側に椅子を置いて座っています。

それぞれが黒いドレスやズボンで、役としての衣装などはつけません。
小道具も最低限。

NYですから、当然字幕も出るはずも無く当然台詞も英語でしたが、役者の発する言葉の感覚が本当に耳によく、充分理解できたし楽しめました。

圧巻はロキシーを演じたBianca Marroquinという人。

ラテン系のコケティッシュで明るい表情もさることながら、芝居の感が本当に鋭く、相手や状況がどんなに動いても、余すことなくキャッチして自分の台詞にかませていくと言う、コメディエンヌの才能120%です。もちろん、踊りも歌も最高レベル。

この振り付けと演出は、映画「オール・ザット・ジャズ」でおなじみの、ボブ・フォッシーです。

もう亡くなっていますが、トレードマークの山高帽と白い手袋はここでも健在。

一度振り付け家は変わっているようですが、それでも彼の振り付けは残したままです。

この人の特徴は、身体を背中の方に句の字に曲げたり、指先を泳がすように手首から左右に振ったりと、およそ人間の身体の流れとは別の方向に、柔らかく、しかも自然に動かしながら作られています。

私は大ファンで、ライザ・ミネリのパフォーマンスをTVなんかでやると、この振り付けが観たくてかぶりつき(笑)。

この振り付けを、ものすごく柔らかい身体で踊って見せてくれたのが、Biancaです。

驚きました。
本当に身体が柔らかく、かといって緩いのではなく、ダイナミックです。
誰よりも上手かった。

ああ~、ここでも「上手い」と言ってしまいますが、本当にそうなんですもん(^^;)

でも、日本では全く無名ですよね?
ジュリー・アンドリュースやライザ・ミネリみたいに名前が無い。

世界には映画と言うメディアで出て行かないとキャリアはまた別のもの。
そういえば、一時期、バーナデット・ピーターズという私の大好きな素晴らしいミュージカル女優が変なアメリカ映画に頻繁に出たりしてました。この人、ソンドハイムのパートナーですよ(^^;)

そう考えると、Biancaばりのレベルはいくらでもいるわけで、それでもたった一つのミュージカルに、何年かしか出られない。他の作品でまた当たるとは限らない。その層の厚さ、底の深さにぞっとしたって訳です。

「シカゴ」は到着した日に連れてってもらったのですが、月曜日で選択肢が限られていました。
劇場が休みなんです。

最初は「メリーポピンズ」に行こうと腰を上げたのですが、高いチケットしかなくて、貧乏旅行だった私にはしんどい。じゃあ、と言うことで有名なチケット格安販売所「tkts」で友人が見つけてくれたのが「シカゴ」。
しかも半額で6千円くらいで見れました。
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観てよかった~!

いきなりのショックではありましたが、こればかりは日本では体験できない感動でした。
さすがBroadway!

それにしても、売れないチケットをあっさりと半額にして、それでも客を入れる努力をすると言うこの商売根性。
それだけ映画やTVと同じ感覚で、ミュージカルや芝居を観に来る土壌があるとしても、基本は席を空けないというところに終始してる。はっきりしてるんです。「商業」に対してのモチベーションが。
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このお姉さんは「シカゴ」の呼び込み。

「シカゴ」はすでにピークを過ぎており、客足が落ちているそう。
だからこそ、半額で変えたんだけど、このお姉さんのパフォーマンスも面白かった。貢献してます。

今は日本のオペラ界も演劇界もかなり厳しいですが、基本的にアメリカは国の資本で劇場を運営していません。

寄付とかパトロンと言う制度が充実してますから成り立つことでもあるかもしれませんが、「商業」であり、「利益」を求めるということが、どれだけレベルを上げるかを目の当たりにしました。

メトロポリタン歌劇場であっても、「商業」として成り立たせるためにはかなりの努力をしてるんですよね。

実は、NYへの短期留学を考えていて、今回は下見と人に会うのが目的でした。

留学の目的はもちろんあったのですが漠然とそうありたいと思っているだけでした。
それが、たった一夜を体験しただけで、叶えたいと強く願えるエネルギーをもらってきました。
恐るべし・・・・・。

まだまだ観て着ましたよ!

次回はメトロポリタン歌劇場のレポートです!
お楽しみに~(^^)
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by kuniko_maekawa | 2010-04-29 16:17 | 観劇日誌 | Comments(0)

MEC公演モーツアルト作曲「Cosi fan tutte」

腕が痛いだの、肩が痛いだのと騒ぎつつ、3月27日に一つ本番を終えました。

MEC(Music Education Company)と言う団体とのモーツアルトの「Cosi fan tutte」。

色んな都合があり、カットカットで1時間45分に力技で収めたという優れもの(笑)。

この団体は、青柳先生と言う作曲家の先生を中心に、器楽や声楽、作曲等、色んなジャンルの人たちが集まって、それぞれが音楽と向き合い勉強して行くという主旨の元、公演や演奏会を行っています。

前回は同じモーツアルトの「フィガロの結婚」を公演したそうで、2年くらいの間をあけての声楽部門の発表会もかねています。

団員は主要3キャスト。

Fioridiligi、Dorabella、Despinaが団員の方々。それ以外は助演の方々が頑張ってくださいました。

さて、私はこの「Cosi fan tutte」と言う作品が、正直そんなに好きではありません。

毎年S音楽大学の授業でもハイライトをやっていますが、やるたびに少々うんざり。

理由はリブレットが複雑すぎるから。

って言うか、面倒くさいから(笑)。

話しの内容は簡単です。
御存知の方も多いと思いますが、若い軍人が、老哲学者に煽られて、それぞれの恋人の誠実を賭けます。
彼らは、哲学者に言われるままに、トルコ人に変装し、彼女たちを落とそうと仕掛けを掛けます。
もちろん、落ちないと思っていたのに、彼女たちは段々トルコ人に変装した男達に恋していきます。
結果的にはネタバレして、「世の中冷静さを失っちゃいけないよ~」みたいなことみんなで歌って終わります。

この物語をやるに当たり、一番面倒なのは、オーソドックスな形が存在するということ。

通常、これを上演すると、大抵は元の恋人と違う恋人を落とすという形を取ります。

いつの間に、そうなったのか。
授業をやっていても、人を取り違えると、学生が混乱する。

でも、楽譜にもリブレットにも、それを指示することは書いてないのですから、男達はどちらを落としてもOKなはず。

つまり、変装してるってことが問題で、元の恋人じゃない人たちに誘惑されると賭けに負けるわけですから、男達はどちらを落としても良いんですね。

こういったことから崩していかないといけない。

しかも、台本上、そこをベースに崩して行くと、音楽と合わないところが出てきたりする。

例えば、2幕のDorabellaとGugliermoのデュエットなど、正にそうで、先にFioとFerrandoが散歩に出かけた後、Gugliermoが二人が気になってしょうがないのに、Dorabellaが積極的に仕掛けてくるから、苛々が募るし、親友の恋人が自分を誘っているということに混乱する。

だから23番のデュエットで、お互いの胸を触ってどきどきすることや、「今や変わってしまった」と歌う歌詞について、この混乱から26番の「男が叫ぶのには訳がある」と言うアリアに持っていきたいのですが、それをお願いしてデュエットを歌っていると、音楽が暗くなる。

もちろん、リブレット的には成立するのですが、音楽はもっと密接で、遊びが欲しいとなるらしい。

こんな攻防をしなければいけないところが沢山あるんですね。

なんでも単純にやれば良いかっていうと、今度はつじつまが合わないところが出てくるし~(@@)

そういう意味では、かなり勉強になる作品ですが、歌手や演出、それから指揮と、かなり大人であることが第一条件の作品作りとなりますね。

さて、舞台ですが、今回はカットバージョンだったこともあって、創り方としては、構成舞台的な感じになりました。おかげで、一本の深さはありませんでしたが、会場に風が流れやすかったことはメリットでした。

ホールは東京オペラシティ・リサイタルホール。

いわゆるコンサートホールですから、釘は打てない、テープは貼れない、通路はふさげないとないないづくしではありましたが、長方形の箱すべてが空間と思わせます。

もちろん、客席まで使っての構成となりました。

なので、異空間的にこんな感じの舞台を創ってもらいました。
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舞台セットは本郷友美さん。
相変わらず少ない予算で、不思議な空間を創ってくださいます。
色目が良くわからないと思いますが、基本茶褐色のベースに、青や緑の布を重ねたテープを天井から吊っています。ちょっと和風にも見えるBanbooな感じ。

彼女の面白いところは、何故か基本が四角なんですね。
そういうと「そうですか~?」的に彼女は不思議がるのですが、私にはそう見える。

形のことではありません。
形式が無い様であると言う事。

打ち合わせから初めて、色んなソースを出してくる人ですが、そのソースがまとまって目の前に出たときに、おっと~、こう来たか~!的なスリリングさもあります(笑)。

でも、それって、彼女の骨格が崩れるわけじゃないので、そこが面白い。
つまり、どんだけ広がっても、スクエアに戻ってくる。

だから、いくら色んなことを言っても、大丈夫。
必ず受け止めてくださって、結果的にはフォームが戻ってくる。

この自由さが面白いんです。


照明はいつもやってくださるASGの稲葉直人さん。

そろそろ、前川の作品ではお馴染みになってきた方もいらっしゃって、チラシを見て「稲葉さんだから観にいきたい」と、チケット販売の戦力になってくれてる照明家でもあります(笑)。

前回の「オルフェオ」のチームと同じ人達でしたが、回を重ねても、作品が違えば試すことが違うというわけで、今回も色々とお試しをさせていただきました。

本郷さんには、舞台美術もそうですが、トータルコーディネートもお願いしました。
つまり、小道具や置き道具も含めて、色目や質感を任せるということ。

衣装はどうしても予算の都合で、あるものを使うしかなかったので、統一感は無いです。
だからこそ、色が沢山出て来てしまうので、そこを統一させてもらうというもの。

私はまだまだ演出家としてのキャリアはありませんから、オールスタッフと言うのは中々難しい。

予算のことでは申し訳なかったのですが、今回は、自主企画した「オルフェオ」とは違って、「すべてを人に任せて中味だけを創りたい」というのがマイ・コンセプトでしたから、それを経験したくてお願いしたことでした。

そこを快く引き受けてくださって、頑張ってくださいました。
本当に感謝です。

そういう意味で、今回、一番難しかったのは意外や照明。

もちろん、明かりを創るのはプランナーである稲葉君の仕事ですが、色んなトータルコーディネートを人任せにすると言うことは、私にとっては逆に面倒くさいことで、(だからこそ経験しようと思ったのですが)私は元来、全てを自分でやりたい人。

出きれば舞台、衣装、照明、すべてを自分でやるのが一番良いと常々思っています。

その辺は、周りも段々解ってて、現場に入っても、いつの間にか勝手にうろうろ舞台を触ったり小道具を触ったりしているのを黙っていて、できる限り私の世界を邪魔しないようにしてくれますが、今回、舞台美術をまず任せたので、どうも私の絵が中々浮かんでこなかったのですね。

照明も然り。

稲葉君とは、もう5年も、なんやかやと一緒に創ってますから、彼も私の好みや創り方は心得ていて、かなり好きな世界をいつも創ってくれますが、そういう意味で、今回は何度打ち合わせをしても、漠然としか話せず、ちょっと申し訳なかったです。

ただ、一つだけやりたかったことは、ページをめくっていくように景を進めたかったこと。

これだけは決まっていて、そのページをどうめくるかに迷ってました。

例えば、絵本であれば、表紙も見て、それから1枚めくって、文章を読んで、絵を観ていく。

けれど、小説であれば、文章を読み終わればさっさとページをめくって文字の世界を創造していく。だから絵本よりも当然早いですよね?

尚且つ、このページをめくるという作業を、はっきりわからせたくない。

つまり、音楽とぴったり合っていては面白くない。

元々モーツアルトは、リブレットより先に音楽が進んでいて、シーンを変えて行きます。
そのことを歌い手がわかっているかどうかで、かなり音楽観が変わる。

「愛してる」と言う台詞の前の小説の3拍目くらいから、もう「愛してる」と言う言葉を言うための音が動き始めているので、そのことを歌い手が予測して感情と音楽を変えていかないと、風が止まっちゃうんですね。

これを今回は照明でもやりたかった。
つまり、いつもある、Qの存在を感じないものを作ってほしかった。

ホールの条件が悪かったので、シーンの明かり自体は出来る範囲が限られていましたが、このページをめくるということに関しては、稲葉君は素晴らしかったです。

元々、ON、OFFの上手な人だと思ってましたが、今回は見事。

どこでQが変わったか、定かでないくらい、ページが上手くめくれてました。

カットバージョンだったので、どうしても景ははっきりしちゃうのですが、1幕も2幕もフィナーレになると、ずっと音楽の中でいつの間にかページがめくられていて、最高に面白かったです。

実は、一度やってみたいことがあり、これってもしかしてやってみたらば、オーソドックスじゃないと激怒されそるかも・・・・と、稲葉君と二人でどきどきしながら、それでも指揮者や歌い手の協力ももらってやった事がありました。文章にするのはちょっと難しいのですが。

でも、それをやった瞬間に、思わずお客様から拍手が起こり、大満足!
下手したら照明が間違ったのかと思われそうなことだったんですが、拍手が起こったということは、そうじゃない意図をお客さまがわかって下さったってことだから、本当に嬉しかった!

そういうことを、怖がらずに、一緒に試してくれるのが、稲葉君です。

ずっと長く一人のプランナーとやることが必ずしも良いとは言いませんが、それでも、同じ時間を過ごしてきたメリットはここに現れたと思います。

今回のような試みは、お互いにやったこと無かったことだったし、それを「やってみっか」と言う一言でGO出来る信頼が、長く一緒にやるメリットだと痛感します。

そんなこんなで、終わってみれば中々出来ない経験ばかりの舞台となりました。

依頼してくださった団体の方々、スタッフ、指揮者、そしてお客様に、心からの感謝を込めて。

しかしながら、次回、私はいつ舞台を創れるのか・・・・。

こんな経験をしながら、確実に成長できたと思いながら、その先に進むのに、なんと時間のかかることか・・・。

こういう時、本当に涙が出るくらい悔しいです。

今回も、拍手をもらいながら、ただ、ただ悔しかった。

今度はいつなんだ、いつ、このスタッフと舞台創るんだ、いつ新しい歌い手と指揮者に出会えるんだ、いつ、いつ、いつ・・・・・。

皆が思っていることでしょうけれど、結局は自分です。

また皆様に舞台で会える日を、心待ちにし、日々精進していきます!(^^)

会場に足を運んでくださった方々、本当にありがとうございました!
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by kuniko_maekawa | 2010-04-01 23:13 | オペラなお仕事 | Comments(0)