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言の葉のいずるよりも前にきみが好きだった

MEC公演モーツアルト作曲「Cosi fan tutte」

腕が痛いだの、肩が痛いだのと騒ぎつつ、3月27日に一つ本番を終えました。

MEC(Music Education Company)と言う団体とのモーツアルトの「Cosi fan tutte」。

色んな都合があり、カットカットで1時間45分に力技で収めたという優れもの(笑)。

この団体は、青柳先生と言う作曲家の先生を中心に、器楽や声楽、作曲等、色んなジャンルの人たちが集まって、それぞれが音楽と向き合い勉強して行くという主旨の元、公演や演奏会を行っています。

前回は同じモーツアルトの「フィガロの結婚」を公演したそうで、2年くらいの間をあけての声楽部門の発表会もかねています。

団員は主要3キャスト。

Fioridiligi、Dorabella、Despinaが団員の方々。それ以外は助演の方々が頑張ってくださいました。

さて、私はこの「Cosi fan tutte」と言う作品が、正直そんなに好きではありません。

毎年S音楽大学の授業でもハイライトをやっていますが、やるたびに少々うんざり。

理由はリブレットが複雑すぎるから。

って言うか、面倒くさいから(笑)。

話しの内容は簡単です。
御存知の方も多いと思いますが、若い軍人が、老哲学者に煽られて、それぞれの恋人の誠実を賭けます。
彼らは、哲学者に言われるままに、トルコ人に変装し、彼女たちを落とそうと仕掛けを掛けます。
もちろん、落ちないと思っていたのに、彼女たちは段々トルコ人に変装した男達に恋していきます。
結果的にはネタバレして、「世の中冷静さを失っちゃいけないよ~」みたいなことみんなで歌って終わります。

この物語をやるに当たり、一番面倒なのは、オーソドックスな形が存在するということ。

通常、これを上演すると、大抵は元の恋人と違う恋人を落とすという形を取ります。

いつの間に、そうなったのか。
授業をやっていても、人を取り違えると、学生が混乱する。

でも、楽譜にもリブレットにも、それを指示することは書いてないのですから、男達はどちらを落としてもOKなはず。

つまり、変装してるってことが問題で、元の恋人じゃない人たちに誘惑されると賭けに負けるわけですから、男達はどちらを落としても良いんですね。

こういったことから崩していかないといけない。

しかも、台本上、そこをベースに崩して行くと、音楽と合わないところが出てきたりする。

例えば、2幕のDorabellaとGugliermoのデュエットなど、正にそうで、先にFioとFerrandoが散歩に出かけた後、Gugliermoが二人が気になってしょうがないのに、Dorabellaが積極的に仕掛けてくるから、苛々が募るし、親友の恋人が自分を誘っているということに混乱する。

だから23番のデュエットで、お互いの胸を触ってどきどきすることや、「今や変わってしまった」と歌う歌詞について、この混乱から26番の「男が叫ぶのには訳がある」と言うアリアに持っていきたいのですが、それをお願いしてデュエットを歌っていると、音楽が暗くなる。

もちろん、リブレット的には成立するのですが、音楽はもっと密接で、遊びが欲しいとなるらしい。

こんな攻防をしなければいけないところが沢山あるんですね。

なんでも単純にやれば良いかっていうと、今度はつじつまが合わないところが出てくるし~(@@)

そういう意味では、かなり勉強になる作品ですが、歌手や演出、それから指揮と、かなり大人であることが第一条件の作品作りとなりますね。

さて、舞台ですが、今回はカットバージョンだったこともあって、創り方としては、構成舞台的な感じになりました。おかげで、一本の深さはありませんでしたが、会場に風が流れやすかったことはメリットでした。

ホールは東京オペラシティ・リサイタルホール。

いわゆるコンサートホールですから、釘は打てない、テープは貼れない、通路はふさげないとないないづくしではありましたが、長方形の箱すべてが空間と思わせます。

もちろん、客席まで使っての構成となりました。

なので、異空間的にこんな感じの舞台を創ってもらいました。
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舞台セットは本郷友美さん。
相変わらず少ない予算で、不思議な空間を創ってくださいます。
色目が良くわからないと思いますが、基本茶褐色のベースに、青や緑の布を重ねたテープを天井から吊っています。ちょっと和風にも見えるBanbooな感じ。

彼女の面白いところは、何故か基本が四角なんですね。
そういうと「そうですか~?」的に彼女は不思議がるのですが、私にはそう見える。

形のことではありません。
形式が無い様であると言う事。

打ち合わせから初めて、色んなソースを出してくる人ですが、そのソースがまとまって目の前に出たときに、おっと~、こう来たか~!的なスリリングさもあります(笑)。

でも、それって、彼女の骨格が崩れるわけじゃないので、そこが面白い。
つまり、どんだけ広がっても、スクエアに戻ってくる。

だから、いくら色んなことを言っても、大丈夫。
必ず受け止めてくださって、結果的にはフォームが戻ってくる。

この自由さが面白いんです。


照明はいつもやってくださるASGの稲葉直人さん。

そろそろ、前川の作品ではお馴染みになってきた方もいらっしゃって、チラシを見て「稲葉さんだから観にいきたい」と、チケット販売の戦力になってくれてる照明家でもあります(笑)。

前回の「オルフェオ」のチームと同じ人達でしたが、回を重ねても、作品が違えば試すことが違うというわけで、今回も色々とお試しをさせていただきました。

本郷さんには、舞台美術もそうですが、トータルコーディネートもお願いしました。
つまり、小道具や置き道具も含めて、色目や質感を任せるということ。

衣装はどうしても予算の都合で、あるものを使うしかなかったので、統一感は無いです。
だからこそ、色が沢山出て来てしまうので、そこを統一させてもらうというもの。

私はまだまだ演出家としてのキャリアはありませんから、オールスタッフと言うのは中々難しい。

予算のことでは申し訳なかったのですが、今回は、自主企画した「オルフェオ」とは違って、「すべてを人に任せて中味だけを創りたい」というのがマイ・コンセプトでしたから、それを経験したくてお願いしたことでした。

そこを快く引き受けてくださって、頑張ってくださいました。
本当に感謝です。

そういう意味で、今回、一番難しかったのは意外や照明。

もちろん、明かりを創るのはプランナーである稲葉君の仕事ですが、色んなトータルコーディネートを人任せにすると言うことは、私にとっては逆に面倒くさいことで、(だからこそ経験しようと思ったのですが)私は元来、全てを自分でやりたい人。

出きれば舞台、衣装、照明、すべてを自分でやるのが一番良いと常々思っています。

その辺は、周りも段々解ってて、現場に入っても、いつの間にか勝手にうろうろ舞台を触ったり小道具を触ったりしているのを黙っていて、できる限り私の世界を邪魔しないようにしてくれますが、今回、舞台美術をまず任せたので、どうも私の絵が中々浮かんでこなかったのですね。

照明も然り。

稲葉君とは、もう5年も、なんやかやと一緒に創ってますから、彼も私の好みや創り方は心得ていて、かなり好きな世界をいつも創ってくれますが、そういう意味で、今回は何度打ち合わせをしても、漠然としか話せず、ちょっと申し訳なかったです。

ただ、一つだけやりたかったことは、ページをめくっていくように景を進めたかったこと。

これだけは決まっていて、そのページをどうめくるかに迷ってました。

例えば、絵本であれば、表紙も見て、それから1枚めくって、文章を読んで、絵を観ていく。

けれど、小説であれば、文章を読み終わればさっさとページをめくって文字の世界を創造していく。だから絵本よりも当然早いですよね?

尚且つ、このページをめくるという作業を、はっきりわからせたくない。

つまり、音楽とぴったり合っていては面白くない。

元々モーツアルトは、リブレットより先に音楽が進んでいて、シーンを変えて行きます。
そのことを歌い手がわかっているかどうかで、かなり音楽観が変わる。

「愛してる」と言う台詞の前の小説の3拍目くらいから、もう「愛してる」と言う言葉を言うための音が動き始めているので、そのことを歌い手が予測して感情と音楽を変えていかないと、風が止まっちゃうんですね。

これを今回は照明でもやりたかった。
つまり、いつもある、Qの存在を感じないものを作ってほしかった。

ホールの条件が悪かったので、シーンの明かり自体は出来る範囲が限られていましたが、このページをめくるということに関しては、稲葉君は素晴らしかったです。

元々、ON、OFFの上手な人だと思ってましたが、今回は見事。

どこでQが変わったか、定かでないくらい、ページが上手くめくれてました。

カットバージョンだったので、どうしても景ははっきりしちゃうのですが、1幕も2幕もフィナーレになると、ずっと音楽の中でいつの間にかページがめくられていて、最高に面白かったです。

実は、一度やってみたいことがあり、これってもしかしてやってみたらば、オーソドックスじゃないと激怒されそるかも・・・・と、稲葉君と二人でどきどきしながら、それでも指揮者や歌い手の協力ももらってやった事がありました。文章にするのはちょっと難しいのですが。

でも、それをやった瞬間に、思わずお客様から拍手が起こり、大満足!
下手したら照明が間違ったのかと思われそうなことだったんですが、拍手が起こったということは、そうじゃない意図をお客さまがわかって下さったってことだから、本当に嬉しかった!

そういうことを、怖がらずに、一緒に試してくれるのが、稲葉君です。

ずっと長く一人のプランナーとやることが必ずしも良いとは言いませんが、それでも、同じ時間を過ごしてきたメリットはここに現れたと思います。

今回のような試みは、お互いにやったこと無かったことだったし、それを「やってみっか」と言う一言でGO出来る信頼が、長く一緒にやるメリットだと痛感します。

そんなこんなで、終わってみれば中々出来ない経験ばかりの舞台となりました。

依頼してくださった団体の方々、スタッフ、指揮者、そしてお客様に、心からの感謝を込めて。

しかしながら、次回、私はいつ舞台を創れるのか・・・・。

こんな経験をしながら、確実に成長できたと思いながら、その先に進むのに、なんと時間のかかることか・・・。

こういう時、本当に涙が出るくらい悔しいです。

今回も、拍手をもらいながら、ただ、ただ悔しかった。

今度はいつなんだ、いつ、このスタッフと舞台創るんだ、いつ新しい歌い手と指揮者に出会えるんだ、いつ、いつ、いつ・・・・・。

皆が思っていることでしょうけれど、結局は自分です。

また皆様に舞台で会える日を、心待ちにし、日々精進していきます!(^^)

会場に足を運んでくださった方々、本当にありがとうございました!
by kuniko_maekawa | 2010-04-01 23:13 | オペラなお仕事 | Comments(0)

オペラ・レッスンのこと、演出のこと、舞台や絵画や色んなことを書きまくっています。
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