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言の葉のいずるよりも前にきみが好きだった

モチベーション

前回の記事でも書いた「Dunque」の演奏会で、一番辛かったのは女声の声量の無さでした。会場は客席100席くらいの小さなコンサートホールだったにもかかわらず、物理的に声が聴こえてきませんでした。そうなると当然、言葉も聴こえてきませんから、聴きづらいし、それに集中して疲れてしまうと言うわけです。
さて、こう言った現象の場合、皆さんは何が原因だと考えますか?単純に、その歌い手のもともとの声量が小さいとか、緊張しているのかとか、そういった本人にもどうにもならない状況を想像するかもしれませんね。確かにそれも要因としてはあるでしょう。しかし、これはテクニックと感情的なことだと、私的には思います。
私も音大の声楽科を出ていますから、歌い手になろうと思ったときに、何を考えるか、何を望んでいるかくらいは想像がつきます。しかし「何が足らなくて、何が必要か」は余り考えなかった気がします。レッスンでは「駄目」と言うことはよく言われていました。それは出来ないことだとインプットされてしまい、「足らないから得たい」と言う発想にならなったのですね。例えば、「あなたは持ち声はきれいなんだけど・・・・」とか「声は大きいんだけど・・・」とか言うこと。これが声楽をやっていたときの看板でした。私の歌の先生はラッキーなことに、その先の音楽的な要素も「感覚」として目覚めさせてくれた人でしたから、「歌うってことは気持ちを伝えること」くらいは、学部の間になんとなく身についていました。しかし、それを具体的にお客様に伝えるということは、実は裏方の世界に行くまで良くわかりませんでした。こちらの世界に来て初めて、歌い手も含め私たちは「芸術伝達人」なんだと気づきました。つまり、自分を良くすることに一生懸命で、人の前に出る職業だとわからなかったのです。
先の女声陣たちは、多分これと同じ轍を踏んでます。自分だけに意識が行っていて、客と言うものを意識できてないのです。客はわかります。目の前に座っていますから、その人たちがお金を払って席を買っていると意識できてないわけです。多分、あまり売ってないのかもしれません。「私の歌なんて、下手だからタダで良い」って、チケットをあげているかもしれません。それくらい、客に興味がなさそうでした。ですから、伝えると言うエネルギーが恐ろしく足りません。身体も全然使われていないし、息を吸っていないみたいです。しかし、出てくる声は小さく何を言っているかもわかりません。これでは聴きようがありません。もちろん、将来性を感じる人も居ました。しかし、それは声のよさとその人が自然に身につけた感性です。モチベーションが低いのです。
それでは、どうすればこう言った人たちのモチベーションがあがるのでしょうか。これは個人的な問題ですから、「やる気を起こせ」と言うしかないのですが、その理由ですよね。少なくとも、「自分のため」に歌を歌っているのでは、駄目です。歌い手は芸人です。芸を売らなければいけません。自分の磨いている声や、テクニックがどれだけ人を楽しませるか、常にそう考えていられなければ、やめるべきです。自分が歌いたいだけなら、金を取ってはいけません。金を出して歌うべきです。客にお菓子や、飲み物を配って、自分の声を聴いてもらわなければいけません。だって、声では金が取れないんですもんね。
オペラやクラシックを高尚なものだとやってる方が感じているのは、論外です。自分の声は自分のためにあらず。そうやって、日々自分を高めていく。良い声を持って生まれたのなら、それはもう「使命」です。私には宝物のように感じます。それはひとえに、お客様のためなのです。
テクニックに関しては、諸説色々でしょうが、うまくなるのも、お客のため。よりクオリティの高い歌を聴かせるため。そのための努力と投資をどれだけ出来るでしょうか。その意識をもってこそ、プロです。歌がうまいからプロだと思ったら大間違いです。
そうは言っても、その意識をもてない人が大半です。私のところで勉強している人たちは、その意識だけは持てるように、何をやってもエネルギーだけは無くさないように、日々訓練されています(笑)。志を高く持つ。現実とのギャップと戦うのは大変だけど、そうあってほしいと切に望んでいます。
by kuniko_maekawa | 2005-11-23 14:25 | 歌手 | Comments(0)

オペラ・レッスンのこと、演出のこと、舞台や絵画や色んなことを書きまくっています。
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