助演と言うお仕事

「稽古場」に参加してくれた押川君と、稽古中に色々話していたときに、助演と言う立場になると、積極性が出ない、と言うことを言っていました。「助演」と言うのは、研究生機関や大学院などで、声部が足らないときに、外部や卒業生にお願いして、足らない声部の役をやってもらう人のことをいいます。大抵は男声です。これはバレエなんかもそうですが、音楽人口の中で声楽における男声の数は、女声に比べると圧倒的に少ないです。3倍くらい違う。それで、だいたい研究生などのクラスを見ると、男がいないか、居ても一人とか、後は実力が無いとか、そんな感じです。それに比べて女性は倍近くもクラスに居るわけですから、少数でまかなえるわけも無く、そこに登場してくるのが「助演」です。演奏を助ける人達。
さて、この「助演」探しは中々難しいです。声部は単純に、足らないところを探せばいいのですが、誰でもいいわけじゃない。まず、きちんと歌えることが大切です。研究生のサポートに回るのですから、研究生以下の実力では話になりません。それなりの声と、経験が要ります。それから、人間的なことも大きな条件の一つ。出番があってもなくても、授業にいるのが必須ですから、出席ができる人でないといけません。相手が何も知らない研究生達ですから、その子たちを受け入れる器も必要。いちいち苛々してたら話になりませんから、我関せずでいて、尚且つ自主稽古等、研究生達の悩みや演技指導も時には必要。なるほど、こんな状態では消極的にならざる終えませんよね。しかも、助演は出来て当たり前、講師陣はほとんど研究生しか見ていませんから、ある程度、音楽や役も自分で作ってこなければ仕事になりません。それについては誰も手を貸さない代わりに、ちょっとでも出来てないと、白い目で見られる・・・・感じがする(笑)。
最近は色んな都合上、研究生を修了して、すぐに下の学年の助演に入るというパターンがほとんどです。ですから、今まで受ける側だったのがいきなり与える側になり、彼らはストレスの塊になります(笑)。気持ちはわかりますねえ・・・。大変だろうと思います。演目も多く持たされるし。
他の講師の方々がどうかはわかりませんが、私は、助演と稽古をすることを信条にしています。何故なら、助演は「安心材料」であるべきだからです。
どう言うことかといいますと、もちろん研究生より実力が上と言う事は絶対条件としても、だからと言って、教えることなんて、この世界ではありません。経験上、知ってることが多くあるだけで、それは個人的な知識だからです。それに、助演自身もこれから世に出る若い歌い手がほとんどです。研究生達と経験やレベルにそんなに差があると言うわけでもありません。でも、彼らがやらなければいけないのは、「稽古が出来る」と言うことを研究生に感じさせることです。
何故、彼は演出家の要求をこなせるのか、指揮者の音楽を理解できるのか、何より、楽譜が良くわかっているのか。助演だから、当たり前と思っているようでは、そのクラスに発展性はありません。講師陣と対等に稽古をして、稽古場を成立させられることが、なぜ、自分達には出来ないのか、何が彼らと違って、足らないのか、それに気づかなければ、研究生たちは育ちません。そう言う意味で、私は助演と一生懸命稽古をします。そして、ある期間内で確実に変わっていく助演たちを研究生に見せたいといつも思っています。
中々これをわかってもらえるのには難儀します。先の押川君のように、助演さん達は研究生の学費を無駄にしちゃいけないと、授業の邪魔にならないようにしようとしてくれるからです。でも、本当に大切なのは、助演が稽古場に自分をさらけ出して、「煮るなり焼くなり好きにしてくれ!」とまな板の上の鯉になってくれることなのです。
と、言うことで、世の助演さんたち、これをお読みになられましたら、次回の授業から、暴れてください(笑)。もっとも、やりすぎたときの責任は一切負いません。こんなこと言ってるから嫌われちゃうんですよね~・・・・。
でも、そうやって経験値を上げていくのが助演をやっているメリットです。そうは言っても、望んでもこう言う機会を与えられない人がほとんどなんですから、是非、良い稽古をして欲しいと思います。
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by kuniko_maekawa | 2005-07-21 00:34 | 歌手 | Comments(0)