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言の葉のいずるよりも前にきみが好きだった

オペラ歌手の仕事

このところ、オペラ公演を観る機会が何回かあり、そのたびに色々考えることがあります。
今日も、新国立劇場の中劇場で「こどものためのオペラ劇場-ジークフリートの冒険」を観てきました。偶然中劇場のスタッフ部屋で打ち合わせをしており、そこに演出家のマティアス・フォン・シュテークマン氏にばったり。彼とは以前新国立劇場の「サロメ」で一緒に演出助手をやったことがあり、「絶対に観てって欲しい」と半ば、強引にチケットをくれて、ありがたく観せていただくことに。この公演は去年もやりましたが、子供を対象に、ワーグナーの「ニーベルングの指輪」をわかりやすく、かつ時間を1時間ちょっとに縮めて公演しているものです。各音楽雑誌などの評はいつも良く、今日も、それぞれのスタッフが「是非、見ていって欲しい」と熱を入れて誘ってくださるほど。公演は、あの長い内容を頑張って短くし、歌い手達もテンション高く、子供達を楽しませようと動き回っていました。衣装や、しかけなどサプライズも一杯でしたが、正直、それだけの感じで、私はあまり好きではありませんでした。脅かしばかりで、内容が薄く感じましたので。それはともかく、今日は内容ではなく、歌手の話です。
いつも、こう言った舞台を観るにつけ、オペラ歌手ってほんとに大変な仕事だと思います。良い声を作り、芝居の感性ももち、尚且つどんな指揮者や演出家の要求にも答えなければならない。ここがまたすごいですよね。もちろん、歌い手達に意志が無いと言うことではありません。私も、何回か「おいおい、ほんとにそうか~」とぶっ殺したくなる演出家と仕事をしましたが(特にイタリア人なんかに多いです)、それでも相手は演出家です。逆らうわけには行きません。それは、その演出家を選んだ団体の責任で、それを追求しない限り、こちらには権限はありません。それでも、私達はまだ表に出ませんから、やることだけやって舞台を創ってしまったら、手を離してしまうことが出来ます。しかし、歌い手はそうはいきません。その変な演出を演じて、変な音楽をお客の前で歌わなければなりません。それが、どんなにぶざまに見えても、降りることはできません。ここが歌い手達の辛いところだし、逆にすごいところだと思います。もちろん、私達も最善を尽くして、彼らが少しでも居心地良く歌ってくれるように努力します。しかし、所詮は気持ちの問題だけ。どうにも変な衣装を着てたり、変なところに立っていたり、そう言うことを回避してあげる権限は持ちません。では、彼らはどうやってこの状態を打開して行くのか。
やはりベースをきちんと持つことです。つまりオーソドックスな役を自分で作っていると言うこと。これがあるとないとでは全然居かたが違います。オペラの場合、最大の演出家は作曲家です。ですから、どんな演出をしようと、どんな音楽で歌おうと、結局は曲を変えることが出来ません。それをわかっている人は、けっしてそこから逸脱しません。歌い手さんもレパートリーとして役を持っている場合、どんなにひどい演出でも、かなり頑張れるのです。
それでも、ひどいものはひどいですが、こう言う歌い手さんが居るからこそ、オペラが成立すると私はいつも思います。ですから、アシスタントで仕事をする場合、一番歌い手さんに気を使います。だって、すべてを背負って舞台に立ってくれるんですもんね。
何があっても、絶対に負けない自信は歌い手さん自身の中にあるのだと、その強さに、いつも感服しています。
by kuniko_maekawa | 2005-08-02 00:55 | 歌手 | Comments(0)

オペラ・レッスンのこと、演出のこと、舞台や絵画や色んなことを書きまくっています。
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