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言の葉のいずるよりも前にきみが好きだった

オペラ・レッスン 立ち稽古編

本日は東京から。昨日無事に戻ってきました。しかし、戻ってきた途端に雨、雷、地震。これに火事と親父が加わったら日本人の嫌いなものがすべて揃うことになりますねぇ・・・・。
松本にいく前日にレッスンを一本やりました。レッスン生は研究生機関に在籍しているソプラノで、秋にアンサンブル試験があり、その演目を今勉強しています。先に我が家でリブレットと楽譜を読むと言う机上の作業をやりました。そして、その後の展開をどうするかと相談したところ、実際に動いて見たいと言うので、場所と伴奏者と相手役を用意して、3時間の立ち稽古を組みました。私がトレーナーを始めて依頼、初の立ち稽古レッスンですね(あ、変な名称)。音楽を入れて、実際に歌ってみると言うところまでは割りとやりたいと言う人達は多いのですが、動いてみるとなると、中々大変です。まず、動ける場所が必要。それも実際の場所を想定すれば、そんなに狭いところでは稽古が出来ませんから、それなりの場所が要ります。そして、伴奏者。ここまではなんとか用意できても、相手役となるとまた大変です。運良く同級生などに頼めるとよいでしょうが、お願いする場合それなりの謝礼は必要でしょう。もちろん交渉して寸志でやっていただくことになりますが、それ+レッスン代なんてことになると、やはり個人でやるには安いお金ではありません(今回はすべて合わせて1万くらいだったと思います)。それはこちらにも十分判っていますから、この3時間を決して無駄にしないように、心してレッスンをします。それに、そこまでの準備をしてまでも、自分のレベルを上げたいと切望している熱意も買います。中々できるものじゃありません。今回のレッスン生はその研究生機関でも、よく歌える方だと思います。彼女が学生だった時に関わったことがあり、よく知っていたのですが、きちんとした意志と目標を持っています。それだからこそ、妥協せずに勉強する方法を持っているようです。
さて、レッスン自体はほぼ普通の立ち稽古と変わらないことをやっていきますが、今回はすでに研究生機関での演出家による立ちが付いていますから、それを邪魔しないことと、その演目を違う方向から広げていきたいという彼女の要望もあったので、出来るだけ私のヴィジョンはそこには入れないようにして、単純に楽譜上で起こってくるものを立体化すると言う方法を取りました。つまり、出入り口や方向性を決めたら、後は形を与えずに、音楽を成立させると言うやり方です。単純に言えば、楽譜に書いてあるとおりに動いてみると言うことです。例えば、フォルテ、ピアノのダイナミックス、アクセント、クレッシェンド、ディクレッシェンド。そう言うものをト書きとして捕らえながら、尚且つ自分の作っていく音楽とリブレットのイメージが会っているのかどうか。それを私が前で見ていて、チェックをして行くわけですね。もちろん、この世界に定義はありませんから、何をやってもいいのですが、観ている客が違和感を感じることや、本人がやっていることがそのままストレートに客に伝わらないことなどを客観的に指摘していき、どうしたいのか、とうやったら自分のやりたいことが伝わるのか、考えさせていきます。これも自分で考えないことには、本人の体から生み出すことがありませんから、たいせつなことです。
さて、このソプラノさんは、身体能力は決して低くありません。頭もよく、こちらの投げかけも、それに自分が対応し切れてないことや、方向性が違うこともすぐさまキャッチは出来ます。しかし、やはり「歌う」という事に捕らわれすぎていて、どんどん自分を閉じ込めてしまう。単純に「歌うと気持ちいい~!」と言う、開放感がまずありません。これは皆さんそうなのですが、まず歌を歌うための身体の形と言うのをそれぞれの方がもっています。基礎の形。バレエで言うと1番のポーズと言う奴です。しかし、バレエの場合は、それは2番、3番につなげるための基本ポーズなのですが、歌い手さんの場合、その基本のポーズですべてのことがなされているような感じです。これは体を楽器にするために必要なことですが、そのフォームを保つために、一歩も動けないなら意味が無いと思われます。
きちんとレッスンをしていれば、フォームはそうそう崩れません。むしろ無意識に身体の中に入っていることは一杯あるはず。頭で考えなくても体が勝手に覚えているものです。ですから立ち稽古のときに、一々何かを考えている必要は無いはず。その思考回路になっていかないと、まず体が解放されてきません。それでも、こう言う「場」を自分で頑張って作るのですから、彼女のオペラへの情熱は熱いです。1時間くらいかけて、やっと体が自由になってくると、俄然テンションが上がってきて、次の段階へ進むことが出来ます。この解放される時間を少しずつ短くして行くことが彼女にはたいせつなことでしょう。
ちなみにこの日相手役をしてくれたバリトン君も、最初に会ったときは頭でっかちの頑固君でした(笑)。しかし、経験を積むこと、時間をかけて自分を解放することをやっていき、最近はだいぶ稽古場で自由に息が出来るようになってきました。努力していますね。ずっと見ている私としてはやはり嬉しくなります。
稽古場を離れた時は、十分に頭を使うことや、反省すること。フォームをきちんと正すこと、こう言ったことをやっていくべきです。しかし、ひとたび稽古場に入ったら、それらは全部忘れて、ただ音楽と自分の欲求に正直に、身体を投げ出すこと。稽古場は「試す」ところです。そこで丸裸になることを、歌い手も私達スタッフも要求されています。そうやって、色んなことをやって「作品を生み出し」ていくわけです。彼女の今後の発展を期待しています。良い資質を持っていますから。
by kuniko_maekawa | 2005-08-16 12:43 | オペラ・レッスン | Comments(0)

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