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言の葉のいずるよりも前にきみが好きだった

オペラ試演会モーツアルト作曲「ドン・ジョヴァンニ」

お待たせしましたっ!
「ドン・ジョヴァンニ」の御報告ですっ!

去る5月24日(土)
アミュー立川小ホールにて、オペラ試演会と題し、モーツアルト作曲オペラ「ドン・ジョヴァンニ」を公演いたしました。

この公演は、エルヴィラを歌った関口晶子さんと言うソプラノが企画したもので、なんと3年越しに叶えた公演です。

彼女は藤原歌劇団の準団員。

藤原歌劇団の研究生を修了し、その後学校の先生などをしながら地道に歌を勉強していたのですが、ある日、私のところに来てエルヴィラを歌いたいので、「DG」を勉強したいと言い出しました。

色々話をしながら、自分だけだと勉強も一役になってしまうので、どうせなら歌い手を集めて試演会までこぎつけたいと頑張り始めました。

しかし、学生と違ってそれぞれが仕事や本番を抱えており、何回か進みだした勉強会も、ちょっとやってはとまり、ちょっとやってはとまり・・・。あっという間に2年経ってしまいました。

これではいかんと、昨年の春に心機一転、ちゃんと公演を目標に勉強する、と言うことを決め、改めて歌い手探しをし、丁度彼女と同じくらいの人たちが揃えられ、事が進みだしたのが5月くらい。

それから1年は私と一緒に、リブレットを読んで行き、seccoを作りながら、本格的に始動するまでを暖めてきました。

3月からは指揮者を交え、音楽稽古。
そして、4月20日より立ち稽古開始。一月の稽古期間を終え、無事に本番となりました。

「ドン・ジョヴァンニ」は荒唐無稽な話と、綿密な音楽性が素晴らしい世界を作っており、楽曲としても難しく、大きな作品です。

稀代のプレイボーイ、ドン・ジョヴァンニがある屋敷に夜這いをかけます。
目当ては騎士長(警部補みたいなものですね)の娘、ドンナ・アンナ。
首尾よく屋敷に忍び込み、あわや事を起こそうと思ったときにアンナに騒がれ逃げ出します。
そこへ騎士長が娘を助けに現れますが、勢い、ジョヴァンニは騎士長を殺してしまいます。
アンナは婚約者のオッターヴィオと共に復讐することを誓い二人で人殺しの行方を捜しに家を出ます。
ところ変わって、新しい女を捜しているジョヴァンニと従者のレポレッロ。
そこへ3ヶ月前にブルゴスに捨ててきた女。ドンナ・エルヴィラが現れ、攻め立てられますが、レポレッロを出しに遁走。レポレッロは自分が書いた女遊びのカタログを見せて、エルヴィラを追い出します。
次は農民たちの結婚式。その花嫁ゼルリーナに目をつけたジョヴァンニ。まんまとマゼットを追い出してゼルリーナを口説きますが・・・・

と言う風に、ドン・ジョヴァンニと言う一人の人間と彼に影響を受ける女や男たち、最後には騎士長の亡霊に地獄に連れて行かれるという奇妙奇天烈なお話。

この作品は、確かフィガロの次に出来た作品で、台本はお馴染みダ・ポンテ。

きっとこの時代には本当にセンセーショナルだったでしょうし、お客は楽しんだでしょうね。
色気も恐怖も意地汚さも、人間の欲が全部凝縮されているような感じ。

なのに、音楽は本当に綺麗です。夢心地になるくらい。

「ドン・ジョヴァンニ」は私にとっては「心のオペラ」といっても過言ではなく、何度でもやりたい作品です。出来れば死ぬまでに完璧に創ってみたい。後何回できるだろうと、数えるくらいです。

それを期せずして演出できる機会がやってきたっ!ってことで、今回は参加してくれた歌い手たちにお願いして、舞台を創ることをやらせてもらいました。

以前も記事に書きましたが、3月に鹿児島でやった公演で手作りの大切さを実感して、一回自分で色んなものを作ってみたくなりました。

今回、作品が好きなことと、その手作りを是非やってみたかったので、まず照明を入れさせていただき、それから衣装、セットと出来る範囲で自分で作りました。

その結果、出来上がったのがこんな舞台。
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今回もまた照明をお願いしたのは、いつも私と一緒に舞台を創ってくださるASGの稲葉直人さん。相変わらずの丁寧な仕事ぶりで、本当に綺麗な舞台を創ってくださいました。

実は、今回の手作りには明かり作りも含まれて居ました。

このところ演出家仕事が多かった私は、プランナーとの関わり方も感じることが多くて、実際に彼らとどう仕事を進めていけば、良いのか色々と試してみたいと思い始めていました。

そこで、稲葉さんにお願いして、いつもより打ち合わせの時間を長く取っていただき、色々と話し合いながら創らせていただきました。

一番やりたかったことは、楽譜の中身を話すことでした。

通常は稽古を見ていただいて、その後具体的な話をし、実際に明かりを出してみると言うのが打ち合わせの形ですが、それだと決まっていることを話すだけなので、いつも時間で区切られ、感性の勝負って感じになります。

その形でも、稲葉さんのように、何度も御一緒していればもちろんちゃんと創ってもらえるのですが、もっとお互いの共通語を持ってみたくて、楽譜を台本にすると言う作業をやってみたかったのですね。

彼は非常に根気良く付き合ってくださって、退屈だったろうと思うのですが、とりあえず全幕、私が楽譜から何を作っているのか聴いてくださいました。

その上で稽古を見ていたき、明かりの方向性を決めていきました。
そして、実際に出来上がったのが上の写真のような世界。

舞台セットは平台を屏風のように立てて、布をかぶせ、ツタを張り巡らせただけのものですが、見事な世界にしてくださいました。本当に感謝!

彼の特筆すべきところは、場面場面の変化がすごく自然で綺麗なところ。

たったこれだけのセット、これだけの衣装でありながら、曲と場面とものすごく合ってる瞬間があって、音楽と明かりで空間がふっと浮き上がってくるような世界が出来上がったりしています。

観てくださったお客様が「夢に見た」と言って下さった舞台は、彼が創ってくれました。

今回は、私以外はほとんど同じ年代の人たち。

指揮者の粂原祐介君は、28歳と言う若さながら、非常に冷静に丁寧に音楽を創り、同年代の歌い手たちをまとめていました。

演出家が自分よりはるかに年齢も経験も上と言うプレッシャーの中、自分の音楽をしっかりと持って、作っていく作業の仕方は将来を感じさせる人です。これから楽しみな音楽家。

ピアノを弾いてくれた吉田貴至君も若きピアニストで、現在ニ期会や横浜シティオペラなどでピアニストとして頑張っています。
男性のピアノは力強くて好きですが、加えて繊細なタッチが綺麗です。オーケストラとしても十分にかなうアレンジもしてあり、一人で頑張って音楽を支えてくれました。

歌い手たちも若いですが総じて歌唱力のある人たち。

ジョヴァンニの岡昭宏君は新国立劇場の研修生。
非常に良い声の持ち主で、特に語感が良く、語り聴かせの出来る歌い手さんだと思います。
まだ身体能力としては、磨かれてない部分が多いのですが、いずれ歌唱表現の方法を自分で見つけるでしょうから、そうなると素晴らしい歌い手になっていくでしょう。楽しみなバリトン。

レポレッロの上田誠司君。
武蔵野音大の院を出て今は藤原歌劇団の準団員です。
彼は非常に良い感性と声を持っています。彼の特筆すべき点は品性を持っているということ。
これは本当に貴重なことで、彼が舞台に立っていると、洋的な居方が出来る。
しかも、それに臆すること無い風通しのよさも持っています。これからどんどん魅力的な歌い手になると思います。そうなって欲しいです。

オッターヴィオの榛葉樹人君
バリトンからテノールに転化したばかりで、勉強中であるのに良くこの役をこなしていました。
綺麗な声を持っていて、息の流れが自然です。
今は変わったばかりでどうしてもテノールの響きを意識しすぎるところがありますが、それでも十分聞かせられる音楽を持っています。このまま力まずに自然に伸ばしていって欲しいと思います。

マゼット・騎士長をやった周藤諭君
今回最年少のバリトンでしたが、頑張って二役をこなしました。
彼はまっすぐな響きで息が長く歌うことが出来ます。
ですから、騎士長のファイナーレのときなど、本当に良く歌っていました。どの言葉も、どの音も響きが変わらず、怖いくらいに正しい言葉で歌われると、騎士長ってこんなにも怖いんだと再認識したくらい。
経験としては上三役の男性たちにはまだ足りませんが、これからいくらでも変わっていく可能性があると思います。

ドンナ・エルヴィラの関口晶子さん。
今回の言いだしっぺ。
制作をやりながら歌うこともやらなくちゃいけなくて、本当に一生懸命頑張りました。
元々、響きの良い声を持っています。
研究生を修了したときよりも、数段良くなっているのに、いつも、ちょっと自分でネガティブに入り込むのが玉にキズ(笑)。
しかし、豊かな響きの声は聴いているこちらを心地よくさせます。もっと自分を信じてこれからも頑張って欲しいです。

ドンナ・アンナの木下侑(ゆき)さん。
関口さんの同門と言う事で、今回参加なさって初めてお会いしましたが、今回は一番伸びた人かもしれません。
声は深い響きで、息が長く、音域も広い。まだ未完成ではありますが、良い勉強をしていると思うので、これからレパートリーが増えていく人だと思います。
一本を通して役を作るというのが今回が初めてと言うことで、かなりのプレッシャーだったと思いますが、こつこつと問題をクリアにしていき、結局は役として歌うことが出来ました。素晴らしかったです。

ゼルリーナの渡辺文子さん。
私のトレーナーのクライアントさん。何度も御一緒してますが、天然の明るさと歌唱能力の高さゆえに、段々と舞台を踏み始めています。
レチターレも二回参加してくれていて、その度にネガティブスポットに入っては頑張って這い上がってくる努力の人。
真面目なんだと思いますが、もっと稽古場で心と身体を開くことが出来るようになれば、変わってくると思うのですが。良い響きの声を持っています。歌うことはもう出来ています。
後は、役として舞台に居られるようになって欲しいです。

彼らが本当に力量以上に頑張って、今回の舞台を作らせてくれました。
私の経験のために作り出したさまざまのものを黙って受け取って、必死でこなしてくれて、表現してくれた。心から感謝しています。

願っていたように、今回の舞台で予想以上のものを得ることが出来ました。

出来た舞台は、誰に見せても恥ずかしくない舞台で、クオリティも高かったと思います。

でも、私自身はきっともっと出来たかもしれないってどこかで思っています。

助けてもらったことも多かったし、自分で手を離してしまったことも多かった。

最初に予想していたよりも、はるかに大変だったけど、だからこそ、対処できたこともあったはず。

この自責の念を持つことが、実は求めていることかもしれません。

創ってみては「出来ないじゃん」って思うこと。

今回得たものは次に作る舞台でわかること。
その時を待つばかりです。

最後に大雨の中、会場に足を運んでくださった方々、本当にありがとうございました!
沢山の人たちに感謝の想いをこめて。
by kuniko_maekawa | 2008-05-27 01:34 | 観劇日誌 | Comments(0)

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