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言の葉のいずるよりも前にきみが好きだった

2005年 08月 09日 ( 2 )

トレーナー・クライアント

さて、私のところにレッスンを依頼される方が様々だと言うお話は、再三していますが、どの方も、それなりに目標を持っていたり、足りないものを認識した上で、私のところに来てくださっています。私は基本的に来るもの拒まずの体制をとっていますので、どのレベルの方でも、どんな性格の方でも、一応は受け入れるつもりでいますが、やはり、対処しようが無く、困ってしまうこともあります。どういう方が困るかと言いますと・・・。
その前に、私が「依頼者」のことを敢えて「クライアント」と呼ぶのは、私と彼らの間に、契約を介しているからです。もちろん、実際に契約書を交わすわけではありませんが、彼らが欲しいものを私と一緒に学んで行くあいだ、私は私の能力と場所と時間を提供するわけです。彼らはそれに対して、見合った報酬を支払う。その関係が成り立って初めて共同作業もできるわけですから、私は相手をビジネスパートナーだと思っているわけです。これを間違えると、意識的にも「偉い先生」になってしまいます。特に相手が未熟でこちらの経験を頼りにしている時などまさに。
学校でも、研究生機関でも、勘違いしてはいけないのは、基本的にそこに務めている先生や講師はそこに学ぶ学生の学費で生活しています。つまり彼らに雇われているのです。しかも、音大の場合は少なくとも年間100万、200万と学費を納めているはず。そこを見誤ると、その巨額のお金は捨て金になります。これを勘違いしている「先生」と呼ばれている人達の、なんと多い事か。生徒らが学校を捨てて、学費を払うことを拒否したらどうなるんでしょう?生徒が居るから先生と言う形は成り立っているのです。第一「先生」と言う言葉は、「先に生まれる」と言う意味以外、何もありませんよ。つまり、私達は「経験者」であり、彼らより「先達」であるわけです。ですから、彼らはお金を払って、その知識や技を習得する。私達は、それを提供し見合った報酬を受ける。「偉い」必要は何もありません。しかし、多くの「先生」は「偉い」ですし「暴利」に走っています。たった30分の個人レッスンで2万も、3万もレッスン代を取る先生も少なくありませんよね。
ただ、こう言うことは生徒側にも、問題はあります。そのお金を払ってまで、欲しい知識なら払えば良い。しかし、先生の知名度や、先の受験やコネと言うものに魅せられて、その暴利を許す人も多いはず。結局は世の中、何でもそうですが、価値観の問題となってきます。
そう言う事情も含め、私はレッスン生と常に対等であるのが望ましいと思っていますが、このクライアントの中で、たまにですが、何も考えをもたずに来る人がいます。初めてオペラをやる人であれ、「初めてだから、言葉の読み方からやりたい」とか、「音符が読めるようになりたい」とか、そう言うことを言ってきます。その上で、「そんな状態でもレッスンをしてくださいますか」と。もちろん、やります。その方が望むものがある限り。しかし、一番困るのは「私は素人なので、何から手をつけていいのかわからない。」と言うタイプの人。だったら、カウンセラーのところに行けばいいのですが、基本的な問題がご本人にわかってないので、私のような家庭教師的な人の所に来れば、何か教えてもらえると思ってらっしゃる。実は「勉強」をするには、ご本人の問題意識が必要です。出来ないもの、足りないものがわからないと具体的な勉強なんて出来ません。しかも、そう言う方は、今挙げたようなことをお話しても、最後には「素人ですから、よくわかりません」と看板を大きく掲げてこちらをシャットアウトしてしまいます。「私、日本語わかりませ~ん!」と言うのと同じです。これは、本当に頭にきますし、困ります。だったら、私のようなものは必要ありません。素人なら、プロになるつもりはないのですから、舞台に立つのを趣味にして、楽しく歌っていれば良い。しかし、こう言う方に限って、本当はご自分のことを「素人」とは思っていない。この勘違いが「お金を払えば、与えてくれる」と言う誤解を生み、無駄金を発生させます。
もちろん、こう言う場合でも一回はレッスンをします。問題意識を覚えていただくためです。たとえ、それがカウンセリングだけになっても、その方が意識を変えるきっかけになることは必ずします。しかし、それでも、変われなければ、お断りすることにしています。私ところでは「自分で考える」と言うことが必須ですから。与えるだけのレッスンはしませんし、出来ません。自分がどうなりたくて、何を勉強したいのか、そこがわからないのは、如何に自分から目をそむけているか、です。皆さんも、ご自分を見つめると言うことを、ちゃんとできる歌い手さんになっていただきたい。器を拡げていくには、そう言うことが大切だと思います。
by kuniko_maekawa | 2005-08-09 12:28 | トレーナーのつぶやき | Comments(0)

打ち合わせ

今年下半期、私は演出助手として3本。演出家として一本、公演に携わります。レチターレとこれからやるであろう、朗読会をあわせれば、年内に5本。年明けに一本と言う計算です。これは1年を分けて、結構働いていますし、2本は稽古と本番が重なっていますので、中々行動的な1年と言えます。あまり忙しいことを好まない私としては、不測の出来事ですが、まあ経済的にも潤うし、去年1年を休んだ分のギャップを埋めるためにはちょうどいいかもしれません。
さて、オペラ公演を起こすには、さまざまなプロセスを踏んでいかなければなりません。そのために、「打ち合わせ」と言うものが何十回と繰り返されます。本番までの流れは、だいたい次の通りです。まず、制作が立ち上がり、あるいは既存の歌劇団などで企画が興され、演目が決まります。そうしますと、その作品や団体の要する、指揮者、演出家を選出。ここらで、まず一回目の打ち合わせ。つまり、どれくらいの予算があって、どれくらいの規模を団体が望んでいて、ダブルキャストなのか、シングルキャストなのか、オーケストラは使えるのか等々、大まかな概要が話し合われます。それから演出家、指揮者がそれぞれのスタッフクルーをそろえていきます。指揮者でしたら、副指揮者、ピアニスト、場合によってはオーケストラの人達。演出家の場合は、舞台監督、演出助手、舞台美術、照明、衣装。ここが決まると、次に、オーディション等がある場合は、それをやってキャストを選出します。それから、実際に音楽スタッフは音楽稽古に入ります。さて、演出家のほうは、オーディションが終わり、役が決まると、それぞれのスタッフと個別の打ち合わせを始めます。ここからが、長い道のりです。
まず、最初に演出家とそれぞれのプランナーとのコンセプトの投げ合いをやります。演出家のイメージを伝える作業ですね。それが終わると、最初の段階の絵をそれぞれ描いてきて、演出家と、舞台監督のもとで打ち合わせをします。この個別の打ち合わせを2回くらいやった後に、今度は全員そろったところでの打ち合わせになります。ここにはすべてのプランナーが居ることが望ましいです。ここで、疑問ですよね。舞台美術、衣装、メイクまではなんとなく想像できても、照明とかも参加するの?って。ここが、舞台って総合芸術だなと思うところですが、舞台セット、照明の機材は、すべて舞台上にある空間で仕込まれていきます。もちろん、この段階でプラン自体は舞台美術家のものですが、このセットとそこに立つ歌手に明かりを当てるのは、照明家の仕事。と、言うわけで、舞台セットが実際に立たされる位置。形、これによって照明のラインを創っていくわけですから、当然一緒に打ち合わせをします。特に重要なのは、「吊り物」と呼ばれる、パネルや、幕類。これは舞台の天井に設置されています、可動式のバトンに仕込んで、そのバトンを上下させて舞台上に降りてきたり、上がったりするもの全般をいいますが、そのバトンには照明機材も仕込むわけです。それで、どのバトンを照明さんが使って、どのバトンは舞台美術の方で使うと言った取り決めが重要です。どちらも、ちょうど良い位置というものがあるのですね。それから、ここに衣装さんが居るのは、ひとえに「色」です。舞台美術のセットの色がどういう色が貴重になっているか、照明のコンセプトがどういう色を中心に出してくるか、それによって、衣装デザインを変えなければいけないこともあります。このすべてをまとめているのが舞台監督。私がやっている演出助手はこう言ったプランナーの打ち合わせの場合、話を総合的に聞いておいて、基本的に人の動きについてチェックしていきます。演出家の稽古の様子と、打ち合わせのプランの方向性が違うこともありますから。でも、これはあくまで人の動きに限ります。道具の事や等になると、舞台監督の仕事ですから。こんなわけで、それぞれのセクションで、プランや必要な情報を提供して行くのが打ち合わせです。
それにしても、打ち合わせと言うのは、本当に根気のいる時間です。やはりタイムリミットのあることですから、皆、妥協せずに何度も話を蒸し返していきます。真剣であれば、あるほど、重箱の隅をつつくような話し合いになります。それに、日本のオペラ公演のほとんどは「予算」と言うものがたっぷりあるとは限りませんから(ほとんど無いです)、演出家の方もプランナーの方も、限りある予算内で、ぎりぎりまで頑張ろうとする。どうしても解決のつかないことだと思っても、長い時間をかけて、皆で解決策を練ります。しかし、それも、良い作品を創りたいという思いが強ければ強いほど、こう言った打ち合わせは何度も行われます。そうやって創った舞台は、やはりいいものが出来上がります。しないわけには行きませんね。先月から、隙あらば打ち合わせと言う感じで、下半期の公演の準備をしています。この打ち合わせが終われば、たち稽古に入り、あとは本番に向けて仕上げていくだけ。公演自体は2時間か、3時間で終わってしまうものですが、そこに半年を掛けるのが、醍醐味かもしれません。
by kuniko_maekawa | 2005-08-09 02:11 | オペラなお仕事 | Comments(0)

オペラ・レッスンのこと、演出のこと、舞台や絵画や色んなことを書きまくっています。
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