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言の葉のいずるよりも前にきみが好きだった

2007年 01月 13日 ( 1 )

修了公演

さて、「謹賀新年」などと言っていた日々はあっという間に過ぎ、もう日常が戻ってきましたね。
レッスンや研究生の授業も、しっかりと始まりました。

今年、私が持っているクラスは最終学年で、3月に修了公演なるものをやります。
これで、彼らは「研究生」と言う、暖かい園から追い出され、歌い手としての本当に道を歩いて行くことになります。

元々修了公演と言うのは、オペラ歌手育成部として、色んな方向から学んできた事を、お客様の前で、歌手としての役割を経験することが目的です。ですから、ちゃんとスタッフが入り、衣装を着け、メイクをし、照明の中で、作品を演じていきます。そして、これは集大成ではなくて、オペラ歌手として、お客様の前にでる第一歩となるわけですね。

私達スタッフも、この公演に関しては、特別な思いがあります。
私がお仕事をしている、藤原歌劇団育成部オペラ歌手は、今年で27年目。藤原の名だたる歌い手さんたちを輩出し、スタッフも、ほぼ、現場で活躍している方々が、講師としてまさに「オペラ歌手」を育成するために、ずっと関わってきました。

私の代になる前は、私の師匠、そのまた前は、今は亡き粟國先生などが、演出をなさっておりました。

そして、先にも記しましたように、2年間をかけて勉強してきたものを、お客様の前に出す時に、演出家、指揮者、そして、舞台監督以下、各スタッフをそろえて、きちんとした形で舞台に立たすことを信条としていました。

なぜかと言うと、修了した研究生達が、全員、この先もソリストとして活躍できるかと言うと、正直、一握りもいないかもしれません。まったく皆無かもしれません。そのためにも、一度は、ちゃんと経験をしておくべきなのです。お客様の前でオペラを公演すると言うのが、どう言うことかと言うことを。

今は、予算が激しく無くなり、昔のように、舞台美術家が入ったり、衣装を借りたりすることが、出来ませんから、お客様にも、申し訳ないような、舞台セットではありますが、それでも、ちゃんとメイクをして、照明の下に立ち、演出家や指揮者のコンセプトをお客に伝える。そう言う役目であることを体験し、外の世界に出て行くことが出来ます。

私達スタッフは、この真っ白な研究生達と、真っ白な作品を作るのに、外公演では感じ得ない「物つくり」の原点を見ます。

「特別」と言うのは、そう言う意味で、今までも、実験的な舞台が沢山出来ました。
何せ、研究生は何も出来ません(笑)。これは、ほんと。経験も、知識も、方法も知りません。

しかし、若さとエネルギーと、テンションがある。
自分達が、初めて作る舞台に向けての力のかけ方が、ものすごいです。

ある意味、サークル的ではありますが、そのサークル的な集中力があるからこそ、面白い作品が生まれます。何せ、ただ言われることを頑張ってやるしかできない。だけれど、やり始めたら、どこまでも・・・・なんですもん。

この勢いに乗って、私達も叱咤激励しながら、色んな事を試していきます。
そのためには、通常よりも、沢山の引き出しを用意し、それを試しては捨て、試しては捨て、していかなければ、生まれてきません。

他のスタッフも同じでした。
スタッフ作業も、学生がやりますから、その子たちに出来ることを与えながらも、小道具や大道具が、舞台でどういう意味を持っているからを、もう一度理解しながら、一緒に作っていくのです。私も、長い間演助で入っていましたから、ずっとそれを経験していました。

こうやって、いつの間にか、皆が同じ作品によって、一つのグループになっていき、それぞれが精一杯のものを出して、修了公演は出来上がります。それが、本当に経験として私の中にも残っています。

私の師匠にしても、この修了公演を15年以上やって、ノウハウを培いました。
初演物も多かったし、師匠たちも若かったので、ほとんど手弁当で面白い舞台を創ることに、夢中になっていましたっけ。

基本的には、「好きだから」と言う、私達のモチベーションですが、この修了公演を踏まえて、舞台に上がっている、今の藤原の歌い手さんたちは、ソリストでも、合唱団でも、あるいは、本公演以外の、舞台でご一緒しても、さっとお稽古が成立し、「物つくり」の体制になります。素晴らしい。これは、基本的には自分達で考え、作る能力がなければ、舞台に乗れないこと、裏方をやって、公演自体がどうやって出来上がり、歌い手がどう言う仕事をすればいいのかを、研究生の時代に、叩き込まれているからです。

こういった、現場の考え方を知らない、あるいは知ろうとしない人も増え、最近は、昔のように、丁寧に修了公演を作ることが難しくなっています。
問題など、様々ですが、時代が変わったこともあります。つまり、考え方が変わったってこと。それによって、段々に簡略化し、上の人たちの扱い方も変わっています。

私は、昔は昔、今は今、と、どこかで割り切って付き合ってはいます。理想を追ってしまうと、叶わないことの方が多いと言うことと、私と師匠たちとでは、経験も能力も違い、あそこまでの公演を自分が作れるかどうか、疑問だからもあります。

それでも、修了公演が一番良かった時代を、知っている人間なので、この公演に演出で関われることを、本当に嬉しく、誇りに思っていますし、何より、心の中では、ずっと師匠たちが培ってきた、修了公演のモチベーションが消えていません。それを持ち続けています。

願うならば、それを今の研究生たち、助演の人たちにも、わかってもらいたい。
そう思いながら、毎回の授業に挑んでいます。大切なことは、これが、私達の一歩になるということなんです。

チマローザの「秘密の結婚」は、本当に歌い手の力量が必要とされる作品です。どこまで彼らがそれを理解しているかは、まだわかりません。何せ、先週やった授業はひどかったですから(^^;)。

それでも、本番は、お客様が会場を出た瞬間から、なんだか笑顔になっているような、公演にしようと思っています。

さて、頑張りますよ。これは私の大切なプロセスですから。皆さんも、どうぞ、お暇なら見てやってください。そのうち、新着情報にアップしますので(^^)。

今年も、たくさん、オペラが創れると嬉しいです!がんばろ~!!!
by kuniko_maekawa | 2007-01-13 12:54 | 演出家のつぶやき | Comments(4)

オペラ・レッスンのこと、演出のこと、舞台や絵画や色んなことを書きまくっています。
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